絶対王者が早くも野望を口にした。ショートプログラム(SP)、フリーともに歴代最高点を大きく塗り替え、前人未到の合計300点超え(322・40点)を達成したソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20=ANA)が、一夜明け、29日の会見でフリーでの4回転ジャンプについて「4つで十分かと言われれば、そうではない」と発言。18年平昌での連覇に向け、それ以上に挑戦する可能性を示唆した。

 大記録から一夜明けると、羽生は次の挑戦を始めていた。エキシビション前の練習で、成功したことのない4回転ループに挑んでいた。現在持つサルコー、トーループの2種類の4回転ジャンプに、もう1つを加えようと必死だった。会見では「今季、ループを跳びたいとやってきたが、まだできていない」と悔しそうに話した。

 自分で出した得点が、新たな壁になった。それを超える、最強のプログラムとは何なのか。問いにこう答えた。

 羽生 分からないです。分からないから楽しいんだと思います。(中国の)金博洋選手は4回転ジャンプ4つで十分だと言っていた。でも僕はそうではないと思う。

 まだ、4回転4本を達成していないにもかかわらず、それ以上が必要だと口にした。大きな目標を掲げる背景には、男子フィギュア界の「4回転時代」の加速がある。今大会では男子全員が4回転を跳び、特に18歳の金は最高難度のルッツを含む4回転ジャンプ4本をフリーに入れた。連覇を狙う18年平昌五輪まで、さらにレベルが上がることは十分考えられる。

 現規定で同じ4回転ジャンプを跳べるのは2回まで。もしフリーで5回跳ぶなら最低3種類が必要だ。羽生は既にルッツ、4回転半も練習し始めており、前人未到の「4回転5種類」が頭にはある。「日々の成長を楽しみながら、自分の限界に挑戦していきたい」。誰もが予想できなかったフリーの200点超え、合計点300点超えを達成してもなお、大きな可能性を秘めている。

 エキシビションでは、フリーのラスト部分を再演し、観客を熱狂させた。2週間後には3連覇がかかるGPファイナル(12月10日開幕、バルセロナ)が待つ。「得点だけでなく、演技(の内容)も超えられるようにしたい」と、高いレベルを自分に求めた。【高場泉穂】