夢舞台を奪い去る悲劇だった。田知本愛(27=ALSOK)が畳の上であおむけになり起き上がれない。決勝、残り1分を切った時。山部の背面深く出足払いを放った直後だった。左脚から力が抜けた。痛みが襲う。「よく分からない。初めての感覚」。混乱のなか「残り50秒で立てるかで、五輪の可能性がなくなるのは嫌だ」。奮い立ったが、脚は動かない。攻勢を許し、寝技で一本負けを喫し、担架で救護室に運ばれた。

 大会前まで十分なリードがあった。国際大会の成績では山部を大きく上回った。今月上旬の全日本選抜体重別選手権で準決勝で負けても、優位は揺るがないとみられたが…。試合後は70キロ級でリオ五輪代表の妹遥に車いすを押され、検査のため病院に向かう間際に知らせを聞き、2人で目に涙を浮かべた。愛は「すいません」の一言。妹だけが五輪に出るのはロンドン五輪と同じ。予期せぬケガ、そして一本負け。姉妹出場の夢が散った。