男子は5人のリオ五輪代表が決定した。団体金メダルを狙うメンバーについて、元世界選手権代表の植松鉱治氏(29)に聞いた。

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 いいメンバー構成になりました。内村航平選手(27=コナミスポーツク)は、「自分の背中を見てついてきて」という、あまり話さないタイプ。そこを補えるのが、同学年の山室光史選手(27=コナミスポーツク)です。

 2人ともコナミの元同僚です。長年、練習をともにしてきました。山室選手は技などもしっかり理論的に考えて、言葉で伝えることができる選手です。試行錯誤しながら、その過程を整理できる。感覚で体操をするタイプではなく、だからこそ内村選手をフォローしてチームとして良いバランスを取れると思います。

 山室選手の今日の演技には、五輪選考基準である「団体貢献度」への強いこだわりがありました。2位に入った跳馬では、NHK杯から難度を0・05点上げて15・400点にして臨んでいました。つり輪も降り技を伸身月面から伸身新月面に変更してプラス0・2点にしていた。着地で失敗しましたが、厳しい選考会でのチャレンジは素晴らしいと思います。

 彼はロンドン五輪で大けがを負ったという経験があります。私も会場で見ていました。団体決勝の跳馬の着地で左足を骨折。「ああこれはダメな方のけがだ…」と一瞬で分かりました。つらかったと思います。手術、リハビリを乗り越えての2度目の五輪切符。本当にうれしい気持ちです。

 田中佑典選手(26=コナミスポーツク)は、今日は完璧にやろうとして体に力が入りすぎたのかなと感じました。鉄棒も1つ離れ技を抜いてましたね。彼も2度目の五輪。本番までには仕上げてくれるでしょう。

 白井健三選手(19=日体大)の床運動について言えば、「すごすぎる」の一言です。突き抜けてしまっています。同じDスコア(演技価値点)の選手がいたとしても、あの完成度で演技できる選手はいないでしょう。今日の得点は16・650点。こんな得点、見たことないですよ。順当にいけば金メダルは間違いないですね。

 ◆植松鉱治(うえまつ・こうじ)1986年(昭61)8月30日、大阪府松原市生まれ。松原七中、清風高を経て仙台大進学。4年時の2008年全日本学生選手権個人総合で内村を抑えて優勝。コナミでも「鉄棒のスペシャリスト」として活躍。2010年世界選手権では日本の団体銀メダルに貢献。2013年全日本選手権の鉄棒で優勝。昨季限りで現役を引退した。