東洋の魔女の願い-。64年東京五輪女子バレーボールで金メダルを獲得した東洋の魔女こと元日本代表の千葉勝美さん(72)が8日、20年東京五輪のバレーボールの会場として「有明アリーナ」(江東区)の新設を涙ながらに訴えた。

 都内で行われた記者会見には、千葉さんを含むオリンピアン16人や日本バレーボール協会の木村憲治会長らが出席。東京都の小池百合子知事宛ての嘆願書を提出する前におのおのの思いを語った。黒のジャケットを羽織った千葉さんは涙をぬぐい、言葉を詰まらせながら訴えた。「本来なら河西(昌枝)さんが出席すべきだったのですが…。先輩たちの思いを背負って、河西さんの洋服を着てきました。絶対に有明アリーナを作ってもらい、後輩たちが1万5000人の前でメダルを獲得してほしいです」。

 河西さんは当時、日本代表のコーチ兼主将を務めており、13年に脳出血のために死去した。「何かある時はこの服を」と言われ、千葉さんは“勝負の日”であるこの日に河西さんのジャケットを着用してきた。

 男子日本代表の新監督に就任した中垣内祐一氏(49)は「有明は羽田と成田に挟まれ、大都市東京を背にひかえ素晴らしい立地。世界の有明アリーナとして、世界に挑戦できる体育館になると思う」とアピールした。

 バレーボール会場を巡っては、招致段階の整備費用は176億円だったが、その後、404億円に高騰。都の調査チームは1日、現行の有明アリーナの規模を縮小して整備する案と、横浜アリーナへ変更する案を提案した。有明アリーナは建設工事費やセキュリティー対策の費用を圧縮することで30億円程度はコスト削減が見込めるとし、横浜アリーナは、観客席を1万5000席に増設する費用などで約7億円が必要になるという。

 3日に行われた国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者の実務者による作業部会では、IOCのデュビ五輪統括部長は都の「見直し案」に関して「選択肢はどれもまだ残っている」とし、30日にも4者のトップ会談を開き、最終結論を出す方針を示していた。