阿部兄妹が20年東京五輪へ向けて大きな一歩を踏み出した。男子66キロ級の阿部一二三(19=日体大)が先月の講道館杯全日本体重別選手権の覇者、橋口祐葵(22)に一本勝ちし、2年ぶり2度目の優勝を果たした。女子52キロ級では妹の詩(うた、16)が準優勝で阿部兄妹の存在感を見せつけた。

 決勝は講道館杯準々決勝で敗れた橋口。阿部は「圧をかける柔道をした」と振り返るように積極的に前に出た。開始1分2秒。袖釣り込み腰で有効を奪い、その43秒後に得意の背負い落としで1本を奪った。「絶対に負けないという気持ちがあった。投げて一本を取るという、自分の持ち味が出たのは良かった」。

 男子66キロ級決勝の約30分前には詩が決勝で敗れた。兄妹制覇の夢はかなわなかったが、この負けが阿部の闘争心にさらに火を付けた。「プレッシャーが良い刺激になった」。

 詩は目標は「お兄ちゃん」と言うぐらい、兄を尊敬している。けんかもほとんどなく、柔道を通して、互いに刺激し合う兄妹である。

 阿部は14年グランドスラム東京では、ロンドン五輪銅メダルの海老沼匡らを撃破し、高2で優勝した。リオ五輪の星として脚光を浴びたが、五輪切符は獲得できなかった。その悔しさは今でも残るが「4年後の東京五輪で悔しい気持ちをぶつけたい」。詩は「組み手、技のキレともに世界一になって、東京五輪は2人で優勝します」とあどけない表情で目を輝かせていた。