●真横へ忍者走りで消耗防ぐ

<その2>新兵器ナイキでフットワーク

 錦織は、今年から、ナイキと複数年のシューズ契約を結んだ。ジュニア時代から長年、アディダスを愛用してきたが、「軽い上に、非常にしっかりサポートがあって丈夫」という理由で採用した。まだオリジナルをつくるまでは行っていないが「いろいろ改良は頼んでいる」という。

 そのシューズが支えるフットワークは、錦織の生命線だ。現在のトップ10で、身長180センチ以下は178センチの錦織だけ。8頭身のモデル体形じゃない限り、1歩の幅も、必然的に他の選手に比べて狭くなる。そのハンディを、細かなフットワークで、効率的な動きでカバーするのが錦織の忍者走りだ。

 14年全米準優勝の時、ベスト4に残ったジョコビッチ、チリッチ、フェデラー、錦織の中で、錦織は走った合計距離が最も短かった。長くなれば、それだけ体力を消耗し、球に追いつく時間を要する。小柄な錦織にとって、それでは致命的だ。

 秘訣(ひけつ)は、通常のストロークで、飛んでくる球に対して前後の動きが少ないことだ。左右に振られても、飛んでくる球の深さはあまり関係なく、真横に動くことが多い。その分、走る距離は短くなるが、打点のタイミングが難しくなる。それを可能にするのが、錦織の忍者走りとたぐいまれなる才能だ。

<<その3は日本の音楽>>