留学2年目になると、チームのリーダーシップを握る。「一番小さな日本人の自分が“もう1本”“もう1本”とみんなを鼓舞した」とリンクでは謙虚さを返上。強気を貫き、レース時は集中力を研ぎ澄ます。殺気立つような雰囲気を身に付けた。シーズン終盤にもろさを出した、かつての姿はない。結城コーチも「オランダの経験で、何があっても大丈夫と思える」と精神面の進化を強調した。

 昨季はオランダで牛乳と卵の遅延性アレルギーにかかり、不振を極めた。昨年5月に帰国すると食生活改善にとりかかる。得意の料理の腕を振るい、3種類の油を使うなど食事管理を徹底。古武術などを取り入れたトレーニングも並行し、筋量を増やしながら1・2キロの脂肪をそぎ落とす。鋼の心と同様、鋼の体を構築。ソチ五輪後の試行錯誤に間違いはなかった。

 今日11日は1000メートル。今季はW杯出場4レースで、表彰台に3度絡んだ。2日連続の金メダルも視野に入るが、落ち着きを保つ。「思い切りはじけるのは五輪まで取っておく」。1年後の世界の頂点まで、すべてが通過点にすぎない。【田口潤】

<小平奈緒(こだいら・なお)アラカルト>

 ▼1986年(昭61)5月26日、長野県茅野市生まれ。165センチ、61キロ。

 ▼3歳で姉についてスケートリンクに初めて入ると、勝手に立って歩き滑り始めた。保育園から他の子を圧倒していた。

 ▼長野五輪 当時は小学5年。男子500メートル金メダルの清水宏保の滑りを見て鳥肌が立った。女子500メートル銅メダルの岡崎朋美にも憧れた。

 ▼研究熱心 伊那西高から信州大。卒論は「有力選手のカーブワーク動作解析の研究」。大学では教員免許も取得。同大教授でもある結城コーチと今でも滑りを徹底研究している。

 ▼実績 06年にW杯初参戦。同大卒業後、09年から相沢病院に所属。10年バンクーバー五輪では団体追い抜きで銀メダル、1000、1500メートル5位。14年ソチ五輪は500メートル5位。今季W杯500メートルは出場6レースで全勝。