文田の特長はしなやかに背中を反らせる柔軟性にある。まるで猫を思わせる柔らかさだが、加えて猫好きでもある。耳が折れ曲がったスコティッシュフォールドと、短い足が特色のマンチカンがお気に入り。6月の全日本選抜選手権前は、3時間も猫カフェに入って過ごし、気分をリフレッシュしたほどだ。

 そんな文田が先輩太田と肩を並べるまでに成長してきた。「(6月の全日本選抜選手権で)太田選手にも勝って、他の国際大会でも勝ってきたので、僕がここで負けるわけにはいかないと思った。最終的な目標は東京五輪での金メダル。五輪で金を取ったら、どれぐらいうれしいんだろう」。猫好きレスラーの目は3年先に向いていた。

 ◆文田健一郎(ふみた・けんいちろう)1995年(平7)12月18日、山梨・韮崎市生まれ。韮崎西中1年からレスリングを始める。父敏郎さんが監督を務める韮崎工で、11~13年の全国高校生グレコローマン選手権と国体で3連覇など高校8冠を達成。16年全日本選手権初優勝。今年は5月のアジア選手権、6月の全日本選抜選手権でともに初優勝した。身長168センチ。

 ◆グレコローマンスタイル 上半身への攻防に限られ、男子のみの種目。腰から下への攻防も認められ、タックル中心の試合展開となるフリースタイルと対照的に投げ技が多用される。レスリングの起源とされ、五輪は1896年の第1回アテネ大会から実施しており、世界選手権は1904年のウィーン大会から始まった。現在は59キロ級から130キロ級まで8階級に区分され、五輪では6階級が行われる。