<テニス:ウィンブルドン選手権>◇4日目◇24日◇ロンドン・オールイングランド・クラブ◇男女シングルス1、2回戦ほか

 【ウィンブルドン=吉松忠弘】3日間にわたる試合時間11時間5分、合計183ゲームの壮絶な死闘がついに決着した。22日に始まったジョン・イスナー(25=米国)-ニコラ・マユ(28=フランス)の男子シングル1回戦は6-4、3-6、6-7、7-6で日没順延となり、23日に最終セットから再開。しかし、またも日没順延となり「3日目」に突入。この日も1時間5分を戦い、最後は70-68で決着がついた。試合時間など数々の世界記録を大幅に更新した、歴史的な試合に幕が下りた。

 試合時間11時間5分、183ゲーム。3日間に及ぶ死闘にも終わりがきた。イスナーがつかんだ5度目のマッチポイント。バックのパスが、鮮やかに抜けた。「本当に疲れた。でも最高の雰囲気だった」。テニス界最長身206センチの体が、芝生の上に倒れ込んだ。

 イスナーは平均時速200キロ以上のサーブを放ち続けた。奪ったエースは112本と世界最多。マユは勝負にこそ敗れたが、奪ったポイントはイスナーより26点も多かった。両者はバナナを食べ、水を飲み、トイレに行き、トレーナーを呼び、転び、合計980ポイントを戦い抜いた。

 23日には、想定外のゲーム数に、昨年から導入されたスコア表示の最新式電光掲示板も対処できなかった。最終セット47オールで、それ以降は表示されなくスコアは消えた。この日は、しっかりとスコアは表示され、歴史的な最後の瞬間、70-68が点灯された。

 試合後、2人は力強く抱き合った。異例中の異例で、試合後にはコート上で世界記録達成の表彰まで行われた。イスナーは「少しだけ疲れたね」と話し、敗れたマユは「これ以上ない戦いだった」とこぼれそうな涙をこらえた。観客席からは、拍手が鳴りやまなかった。