柔道男子100キロ超級の鈴木桂治(31=国士舘大教)が「五輪」を打ち消し、自身5度目の頂点だけを見据えた。今日29日に全日本選手権(日本武道館)を控えた28日、都内で前日会見に出席。上川大樹(22)高橋和彦(27)と競うロンドン五輪超級代表の大切な選考会だが、3度目にして“最後”の五輪を目指す鈴木は「選考会とは思っていない」ときっぱり。日本一の先に、自然と五輪切符はついてくる-。その思いに集中し、大会2連覇に挑む。

 身にまとう空気が、1人だけ違った。鈴木は「全日本選手権を、五輪の選考会とは思っていません。五輪よりもむしろ大きい大会だと位置づけている。日本一という名前を手に入れたい」。自身5度目、復活優勝の昨年に続く2連覇を目指すことだけを強調した。

 ロンドン五輪は「目指す最後の五輪」と公言する。五輪を軽く考えてなどいない。ただ、過去の実体験がこの日の言葉を生んだ。初めて頂点に立った04年はアテネ五輪の年。「アテネは福岡(選抜体重別)で負けて、出られると思っていなかった。でも全日本で優勝したら、五輪代表という“おまけ”がついてきた」。過去五輪年の全日本覇者は全員が五輪代表となっている事実が、鈴木の考えを後押ししている。

 さらに今年から、選抜体重別が1カ月遅れて5月開催に変わった。全日本選手権が超級最後の選考会でなくなったことも大きい。「代表争いに関して言えば、気持ちにゆとりがある」と、集中する条件は整った。

 世界ランクは20位。競う2人よりも低い。「終わったときに『鈴木は強かった』と言ってもらえる柔道ができれば。とことんやります」。昨年は大会前に何度も、日本一になる夢を見た。今回は初戦に勝って引き揚げる姿だけだという。夢の続きは、果たしてどうなるか。【今村健人】

 ◆柔道の五輪代表選考方法

 5月12、13日の選抜体重別が最終選考会で、重量級は男女とも全日本選手権も選考試合とされる。ただし、五輪出場権があるのはランキング上位選手(男子22位、女子14位以内)で、男子100キロ超級は鈴木、上川、高橋の3人だけ。対象選手から過去1年間の結果と内容を判断し、強化委員会が「金メダルに最も近い選手」を選出、全階級が5月13日に発表される。