大相撲に史上初の金髪関取が誕生した。秋場所(9月11日初日、両国国技館)の番付編成会議が27日、名古屋市の愛知県体育館で行われ、5人の新十両が決定。エストニア出身の把瑠都(ばると、20=三保ケ関)が昇進を果たした。金髪関取の誕生に、伝統を重んじる角界からは「染めた方が良いのでは」と、戸惑いの声も上がっている。出世に髪の伸びが追いつかず、大銀杏(おおいちょう)は、来年春場所以降の予定。「ゴールド大銀杏」が果たして見られますか。

 ブルーの瞳にゴールドの髪。新十両昇進を決めた把瑠都は白い歯を見せて笑い、197センチ・165キロの巨体を揺すった。「(今場所は十両に)絶対なれない、思った。うれしい」。目にうっすら光るものを浮かべ、片言の日本語で喜びを語った。

 史上初の金髪関取の誕生だ。曙らハワイ勢に続いて朝青龍を代表とするモンゴル勢、最近ではブルガリア出身の琴欧州ら欧州勢と、外国人の活躍が目立つが、これまでブロンドの髪を持つ力士が関取になったことはなかった。

 「異色」の関取の誕生に、伝統を重んじる角界からは戸惑いの声も上がっている。関取になれば大銀杏を結うことになるが、金髪の大銀杏は前例がない。角界のルールブックにあたる日本相撲協会寄附行為にも髪の色についての規定はなく、学校の校則のように「金髪はダメ」という規則はない。ただ、相撲は神話伝承の時代より続く日本の国技。協会も頭を抱える。北の湖理事長(元横綱)は「まず油をつけて、見た目がどれぐらいになるかだ。それでも色が落ちて見えないようなら、染めることを考えないと」と黒髪に染めさせる可能性も示唆した。

 幸いなことに?

 毎日髪結いに使うビン付け油の影響で、来日当初に比べて把瑠都の髪は金色から少しくすんだ黄土色になりつつある。審判副部長も務める師匠の三保ケ関親方(元大関増位山)は「油をつければだいぶ暗くなるし、大丈夫だと思う」と楽観する。一方で、生活指導部の山科親方(元小結大錦)は「髪を束ねるちょんまげとは違い、大銀杏は薄く広げるので、光の当たり方によっては、濃くならずに金髪が目立つかもしれない」と懸念を示し、「把瑠都の髪が伸びたら、みんな(協会)の前で大銀杏を結わせて、判断するのもありでは」と話した。まだ入門して1年半足らずの把瑠都は今年春場所でやっとまげを結ったばかりで、大銀杏にはまだまだ髪の長さが足りない。「結論」が出るのは来年春場所あたりになりそうだ。

 注目を集めるのはルックスだけではない。初土俵から所要8場所での新十両昇進は、外国出身力士で小錦に並んで史上最速タイのスピード記録だ。この日の会見でも「新十両で何番勝ちたいか?」の質問に「全部」と即答した。実力もハートも折り紙付き。大銀杏を結うころには、幕内にいる可能性も十分にある。髪だけでなく実力でも、今後の角界に旋風を巻き起こしそうだ。【太田尚樹】(2005年7月28日付・日刊スポーツ首都圏最終版)