大相撲の大麻ショックは、かつての相撲王国にも及んだ。日本相撲協会の8日の緊急理事会で道産子の北の湖理事長(55=元横綱、本名小畑敏満)が、一連の大麻問題を受け、引責辞任した。出身地の壮瞥町では、角界のトップに上り詰めた郷土のヒーローの突然の辞任劇に「壮瞥町・北の湖部屋後援会」や「横綱北の湖記念館」などに衝撃が走った。

 8日、北の湖理事長辞任の一報を聞いた「壮瞥町北の湖部屋後援会」の高階茂雄会長(79)は驚きを隠せない。「今回の件は新聞やテレビの報道でしか知りません。理事長という立場上、やむをえない決断だったと思います。残念、無念という気持ちもありますが、今はご苦労さんと言いたい」と心境を語った。

 6月22日に、偉大な横綱をたたえる「第55代横綱北の湖」の銅像が壮瞥町内に完成したばかり。北の湖理事長も除幕式に立ち会った。そのとき、高階会長は「事件や事故が続いていたので、相撲協会も、いろいろ大変だなあ」とおもんばかって声をかけた。「頑張ってやらなければなあ」と北の湖理事長は返したという。小さい頃からよく知っており、これらの問題についても「誠心誠意で取り組んでくれると信じていました」と任期途中での辞任を悔しがった。

 91年5月に開館した「横綱北の湖記念館」の外観は、両国国技館を模して建てられた。横綱北の湖を育んだ美しく、厳しい昭和新山を後ろに配する。大横綱の歩みをつづる写真、最後の優勝となった84年5月の優勝額、等身大の土俵入りの人形などの展示が人気となった。

 だが、記念館を運営する壮瞥町総合サービスの松浦久館長(66)によると、入館者数はオープン当初は年間5万人あったが、昨年は9800人にまで落ち込んでいた。近隣のホテルや温泉施設に営業活動を行っているが、来館者減に歯止めがかからない状態だという。今回の大麻問題による引責辞任が、そんな低迷に追い打ちをかけるかもしれない。