日本相撲協会のトップに立った武蔵川新理事長(60=元横綱三重ノ海)が9日、角界綱紀粛正の象徴として横綱朝青龍(27=高砂)の再教育を宣言した。場所や巡業で尊大な態度を取った場合などは、直接呼び出して警告、問題行動を起こした場合は、解雇処分とする方針を示した。北の湖前理事長(元横綱)は「土俵の充実」を強く唱えたが、新理事長は一連の不祥事の「再発防止」を最大のテーマに掲げた。

 不祥事再発防止への第1歩が「朝青龍再教育」だ。武蔵川新理事長はこの日、理事長室に報道陣を招き入れ、相次ぐ事件、騒動で信頼を失った角界の再建方針を披露。これまで数々の問題を起こしてきた朝青龍について「ちゃんとやってもらわないと、やめさせるしかない」と明言した。

 昨夏の「朝青龍仮病騒動」以来、角界は次々に不祥事に見舞われた。特に大麻問題は、規律の緩みから噴出したといえ、早期の綱紀粛正は必要不可欠。そこで新理事長が着目したのが、全力士の見本であるべき横綱、特に朝青龍の再教育だった。

 朝青龍の態度には、以前から不満を感じていた。国内巡業で朝げいこをサボり、親方衆に横柄な態度を取ったことを耳にすると、師匠の高砂親方(元大関朝潮)に「ちゃんと指導しろ。そのうち、とんでもないことになるぞ」と警告したこともある。「毎場所、モンゴルに帰国するのはどうかと思う。写真集を出したと聞くが、昔の横綱では考えられないような内容だ」。今後、目に余る言動をとった場合は「直接呼び出して、注意、指導することもある」とした。

 朝青龍はじめ、問題の多い立ち合いの整備もはかる。「審判部の指導も期待するが、しっかり手をつくように各師匠に伝えたい」。元若ノ鵬の逮捕、元露鵬、元白露山の大麻吸引で必要に迫られる「外国出身力士の徹底指導」についても「まずは日本語を覚えること。そのために新弟子検査を受けるまでに1年間ぐらいは研修を受けるべき」と話した。

 立ち合いはもちろん、現在「6カ月間」の規定がある外国出身力士への指導期間も、北の湖体制下ではあいまいになっていた。ここにもメスを入れ、「のど元を過ぎれば」ですませてきた角界の体質自体を変えるつもりだ。「うみを全部出し切って、巻き返していきたい」。初登板となる秋場所初日恒例の「協会あいさつ」でも、大麻問題についての反省と謝罪を盛り込むことを明言していた。【柳田通斉】