<大相撲春場所>◇8日目◇22日◇大阪・大阪府立体育会館

 横綱白鵬(24=宮城野)が難敵を退けた。関脇把瑠都(24)を先に攻め立てて、慎重に寄り切った。平幕雅山(31)を引き落とした横綱朝青龍(28)とともに、両横綱が初場所に続くストレート勝ち越し。同一2横綱の2場所連続全勝ターンは、79年夏場所と名古屋場所の2代目若乃花、輪島以来約30年ぶりになる。魁皇(36)が琴光喜(32)との大関対決に敗れたため、1敗力士も不在。両横綱のマッチレースで、パワーアップした白鵬が通算10度目の優勝へ挑む。

 大きな肩が揺れていた。支度部屋へ戻ってきた白鵬は大きく息を吐き、50秒2の取り口を振り返った。「自分より大きい相手だし、懐が深い。落ち着いて取れましたね」。把瑠都とは先場所、がっぷり四つで1分を超えた。左足首には長期戦を想定し、今場所初めてテーピングをした。うまく巻き替え、もろ差しでがぶり、腰を落として前に出る。先に攻め立てながら、慎重に寄り切った。

 雪辱を胸にパワーアップした。白鵬の後ろから、執行(しぎょう)トレーナーがつぶやいた。「あんなに筋肉が出ている力士はいませんよ。最近、また大きくなりましたね」。指摘したのはまわしの下、中臀筋(ちゅうでんきん)と呼ばれる部分。横にボッコリと出た股(こ)関節の外転筋は体のバランスを取り、下半身の安定を生む。

 先場所は朝青龍の復活Vを許した。朝青龍がハワイV旅行に行った2月、しこやすり足を欠かさなかった。場所前も積極的な出げいこで、琴光喜や琴欧洲と申し合い。元幕内の兄弟子で、ぶつかり相手を務める幕下龍皇はいう。「前は力を吸収される感じだったけど、今はバーンと車にぶつかる感じ」。体重は変わらないが、力強さは確実に増している。

 番付発表前日の1日、紗代子夫人の故郷徳島での激励会で宣言した。「大阪で10度目の優勝を決めて、徳島で披露宴を開きたい」。07年2月の結婚当時は夫人が妊娠中だったため、まだ結婚式を挙げていない。2人の子どもに恵まれ、年頭に「2ケタ優勝して結婚式を挙げる」と目標を挙げた。徳島後援会幹部は「優勝したらすぐに会場を手配しますよ」と期待する。

 ライバルの朝青龍とともに、初場所に続いての無傷の8連勝。約30年ぶりの同一横綱2場所連続全勝ターンも「当然です」と淡々としたもの。単独トップに立った過去4度は、優勝確率100%。一方で、朝青龍皆勤場所での逆転優勝はない。数字上は、先に負けた方が賜杯を逃すことになる。1敗力士不在のマッチレース、白鵬は賜杯を抱くまで気を緩めない。【近間康隆】