角界を揺るがす野球賭博問題が、ついに「看板」にまで飛び火した。横綱白鵬(25=宮城野)と個人契約する男性トレーナー(42)が、胴元と力士の仲介役だったことが23日、関係者の話で分かった。同トレーナーは2年前から白鵬の体をケアしており、場所中は東西の支度部屋を行き来していた。すでに仲介役が判明した阿武松(おうのまつ)部屋の床山、床池(29)とは別に、大相撲界には少なくとも2つのルートがあった。白鵬の賭博関与はない模様だが、付け人の関与も明らかになるなど横綱の周辺も騒がしくなってきた。

 角界を襲った賭博問題の「火の粉」が、横綱にまで飛んできた。野球賭博の胴元と力士を結びつけていたのは、白鵬と個人契約するトレーナーだった。このトレーナーはほかに豊ノ島や豪栄道、豊響、嘉風、普天王、清瀬海ら野球賭博への関与が明らかになった力士も担当。体とともに賭博の面倒も見ていた形だ。

 トレーナーは、出羽海部屋などの担当として数年前から角界に関係し始めた。白鵬とは08年夏場所中に左足首を痛めた際、応急措置をしたのが縁で同7月から契約。現在は場所中だけでなく、場所前も持病の腰痛のケアをする。契約後は大きな故障もせず、白鵬が「万全なのは先生のおかげ」と全幅の信頼を置く人物。相撲界だけでなく、約15年前にアマチュアボクシング連盟の推薦を受けて、日本オリンピック委員会(JOC)の強化スタッフにも名を連ねていた。JOCはこの日、アマチュアボクシング連盟から出された「解嘱届」を受理した。

 野球賭博問題が浮上した際から、協会幹部は「窓口は複数ある」と調査していた。すでに仲介役が判明していた阿武松部屋の床山とは別ルートの発覚。協会は夏場所後にこの事実を把握し、トレーナーにはすでに「出入り禁止」を通告している。ただ力士や床山などの「職員」ではなく、「業務」で支度部屋に出入りする人物が中心だったことが問題。賭博問題の闇は、予想を超えるほどに深い。

 トレーナーだけでなく、白鵬の付け人頭の幕下力士も野球賭博関与を認め、警察の事情聴取を受けていたことがこの日、判明。複数の関係者は「横綱は大丈夫」と証言するが、人ごとではない事態だ。この日深夜に名古屋入りした白鵬は「ビックリしました。(自分は)やってません。名古屋場所、精いっぱい頑張ります。心配しないでください」とキッパリ関与を否定。しかし、部屋の関係者が「横綱はショックを受けている」と明かすなど、影響も出てきそうだ。