<大相撲九州場所>◇3日目◇16日◇福岡国際センター

 横綱白鵬(25=宮城野)が仕切り直しの「1勝」を挙げた。西前頭筆頭の琴奨菊(26=佐渡ケ嶽)を危なげなく小手投げで下して連敗を阻止。2日目に東前頭筆頭の稀勢の里(24=鳴戸)に連勝を「63」で止められたが、自身初の5連覇と2年連続年間86勝を目標に、再スタートを切った。歴史的金星を挙げた稀勢の里は、10連敗中だった大関日馬富士(26=伊勢ケ浜)を圧倒した。

 白鵬に笑顔はなかった。「双葉山」を下山した虚脱感は、まだ隠せない。それでも横綱だ。序盤の連敗は許されない。琴奨菊を左で小手に振って裏返した。69連勝後に3連敗し、その場所の優勝も逃した双葉山とは対照的に、仕切り直した。「できれば前に出たかった」と反省しながら、必死に前を向こうとした。

 白鵬

 負けは負けとして認めないと次には進めない。変な気持ちは多少ありましたけど、うまく切り替えられた気はします。

 2日目は稀勢の里に完敗した。うなだれて乗り込んだ車で「やっぱ双葉山ってすごいな…」と、つぶやいたという。その後、宿舎でちゃんこを食べ、向かったのは家族のもと。派手な験直しはせず、福岡滞在中の長女愛美羽ちゃん(3)長男真羽人くん(2)に囲まれて疲れた心を癒やした。

 「平常」を意識した。前夜は運動生理学を学ぶ内藤堅志氏(45)に「欲をかいてしまった。ルーティンがバラバラになってしまいました」と明かした。内藤氏は「明日は朝から1日の流れをつくって」と忠告。これまで通りに朝げいこで胸を出し、立ち合いをチェックした。化粧まわしや締め込み、約2分間の土俵入りも2日目と同じだった。

 白鵬

 昨日ゆっくり考えました。双葉山関にちょっとだけ近づいて、少しだけ恩返しできたんじゃないかな、と。それより15日間、しっかり務めるだけです。

 目指すは5連覇。場所前、モンゴル相撲の大横綱だった父ムンフバトさんに「オレは6連覇した。早く並べ」とゲキを飛ばされた。入門から見守る熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)は「残り全部勝てば86勝」と昨年の年間最多勝記録を持ち出す。双葉山への夢は持ち越したが、落ち込むには早過ぎる25歳。長期連勝後に優勝が少ないジンクスは、笑顔とともに打ち破る。【近間康隆】