<大相撲九州場所>◇12日目◇25日◇福岡国際センター

 西前頭9枚目の豊ノ島(27)が、大関把瑠都(26)を下手ひねりで破った。過去1勝9敗だった苦手を退け、横綱白鵬(25)大関魁皇(38)とともに1敗を死守。日本人として4年10カ月ぶり、平幕として9年2カ月ぶりの優勝へ向け、また1歩前進した。

 想定外の勝ち方だった。豊ノ島は「ツキですね。ついてるとしかいいようがない」と笑った。苦しい体勢から、把瑠都の寄りに合わせて、下手をひねる。すると、自分より29センチ大きい198センチの巨体が右ヒザから崩れ落ちた。「2対8くらいで、大関が滑ってしまった方が大きい。ひねりは得意じゃないし…」。自分の首もひねりながら、銀星を振り返った。

 野球賭博に関与し、7月の名古屋場所を謹慎した。番付を下げた9月の秋場所は十両優勝し、幕内に戻ってきた。元関脇の実力者にとって、前頭9枚目は家賃が安い。勝って当然の対戦が続いていたが、大関撃破は価値がある。横綱との対戦はない見込みで、初Vへの好機が広がってきた。

 父・梶原一臣さん(58)は「今は、以前よりも謙虚に相撲に取り組めている」と話す。どん底を経験し、相撲を取れる喜びが強くなった。今場所後は、宮崎と高知で2人の祖父、東京で時津風部屋を興した双葉山の墓参りを予定。「いい報告ができたらいい」と、最高の手みやげを視野に入れている。

 験担ぎは、婚約者・竹内沙帆さん(29)からの携帯メール。「勝ってくれるのはうれしいけど、ケガがなくてよかった」。力士心理を考え、あえて同じ文面を送ってくれる。婚姻届の提出日は相談中で、披露宴は来年6月に都内で予定する。人生のV字回復を見せている豊ノ島は「優勝争いしているわけですから、狙っていきます」と、迷わず言った。【佐々木一郎】