大相撲が、無期限で見られなくなった。日本相撲協会は6日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、大相撲春場所(3月13日初日、大阪府立体育会館)と、年内の全巡業の中止を決めた。八百長問題が解決するまで、無期限で本場所は開催しない方針で、力士たちは鍛錬の成果を示す場を失った。不祥事による本場所中止は初めて。放駒理事長(62=元大関魁傑)は会見で、約400年の歴史の中で今回の中止は「最大の汚点」と表現し、謝罪した。

 大相撲史上、最も悲しい日が来た。大相撲の前身となった勧進相撲が行われたのは、江戸時代初期のころ。歴史の重みを背負う放駒理事長は、記者会見で言った。「正直申しまして、これからお話しさせていただく内容は、これまでの長きにわたった相撲の歴史において、最大の汚点を残す結果となりました。日本相撲協会は来る3月に予定されている、春場所開催を断念することに致しました」。無念の思いを胸に約3秒間、頭を下げ続けた。

 本場所の中止は、1946年(昭21)夏場所以来、65年ぶり。この時は、戦災による国技館修復の遅れが理由で、不祥事による中止は初めてになる。八百長問題が判明し、14人の親方、力士に疑惑が持たれた。うち3人は、関与を認めた。真剣勝負を信じていたファンを裏切った。

 放駒理事長は「ファンの方々にご理解いただけない状況では、とてもとても本場所を開催することなどできない」と説明した。問題解明を担う特別調査委員会の調査が難航していることも、理由の1つ。「その疑惑が拭い去られるまでは、膿(うみ)を完全に出し切るまでは、恐らく土俵上で相撲をお見せすることはできないと考えております」と、無期限での本場所中止を示した。

 理事会では、無料開放での開催なども意見として出たが、一切行わない。同時に、年内の地方巡業をすべて中止した。力士が、ファンの前で相撲を取る機会は完全に消えた。奉納相撲や参拝は未定だが、地方巡業は江戸時代から約300年の歴史を持つ、相撲興行の柱の1つ。こちらもまた、前代未聞の汚点を残した。

 今日7日から、全力士は本場所という目標が見えないまま、稽古場に立つ。放駒理事長は「これで、本場所がなくなるという話じゃない。調査結果が出て、それに対しての処分も当然ある。必ずそういう日が来る。1日でも早くきてほしいと思っています。しっかり、気持ちを強く持って稽古してほしいと思います」と訴えた。

 調査はまだ始まったばかり。さらに広がる可能性さえ残っている。調査途中のため、八百長を認めた竹縄親方(35=元前頭春日錦)十両千代白鵬(27=九重)三段目恵那司(31=入間川)への処分は先送りにした。今後、再発防止策を示す必要もある。

 放駒理事長は過去の八百長について「なかったということで、そういう風に理解しています」と、改めて否定したが、今回の問題で信頼は地に落ちた。日本に大相撲が戻ってくる日は来るのか。まだ誰も、想像できない。【佐々木一郎】