<大相撲名古屋場所>◇2日目◇11日◇愛知県体育館

 千代の富士の通算最多1045勝に王手をかけている大関魁皇(38=友綱)が、生みの苦しみを味わった。小結豪栄道(25)に力なく寄り切られ、初日から連敗。持病の神経痛の影響で、下半身に力が入らなかった。記録を期待される一方、周囲からは状態を心配する声が相次いだ。今日3日目は、初日から連勝の関脇鶴竜(25)と対戦する。

 2日目も、魁皇にいいところはなかった。立ち合ってすぐに左四つになるが、まわしは取れないまま。ズルズルと後退し、見せ場なく土俵を割った。この日も起きた「魁皇コール」は、またもため息に変わった。あと1勝で大記録に到達するはずが、まさかの連敗スタートになった。

 「昨日よりはましだけど、今日も下半身に力が入っていない。焦りみたいなのは何もないけど、周りがああだこうだ言うから、ちょっと疲れてはいるけど…」。腰の神経痛が場所前に発生し、体調を整えたつもりが、万全には仕上がらなかった。3日目以降、状態がよくなる手応えについて聞かれても「そんなの分からない」と短く答えた。

 師匠の友綱親方(元関脇魁輝)は帰り際「(力が)入らないのかね」と多くを語らず、取組を土俵下で見守った貴乃花審判部長(元横綱)は「じきに達成するでしょう。緊張はするでしょうね」とフォローした。中継するNHKも、金メダルアナウンサーの異名を取る刈屋アナを2日目に配置したが、記録は持ち越しとなった。

 地元の直方市では、初日に続いてパブリックビューイングが行われ、約300人が声援を送った。母の古賀栄子さんは「力が入っていなかった。後ずさりしてたんで(影響は)体調なんでしょうか。もしかしたら、気持ちの面かもしれない」と気遣った。自宅でテレビ観戦した父誠二さんは「何となくだが、下半身の粘り腰がないように感じる。ひとつ勝てば、楽になる。応援している方も同じ気持ち」と、息子の苦しみを思いやった。

 00年秋場所での大関昇進以降、連敗発進は07年秋場所以来8度目。過去7度のうち、最近2度を含む5度は休場に追い込まれた。試練の先にある白星を、多くの相撲ファンが待っている。