<大相撲秋場所>◇千秋楽◇25日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(26=宮城野)が、史上6人目となる20度目の優勝を飾った。連敗中だった大関日馬富士(27)を、豪快な上手投げで破って13勝2敗。すでに大関昇進を決め、前日14日目まで2敗で並んでいた関脇琴奨菊(27)が把瑠都(26)に敗れ、優勝決定戦までもつれることなく2場所ぶりに優勝した。大台到達で「大横綱」の仲間入りを果たし、次は優勝22度の元横綱貴乃花超えを目標に掲げた。

 天皇賜杯を抱きながら、白鵬は深々と頭を下げた。少しでも長く、重みを感じたかった。「一生懸命やっていれば、結果はついてくると思っていた。20回の優勝は、憧れの横綱ばかりが達成した記録。今思うと早く並びたい、大きなカベ、と感じていたんじゃないかな」。八百長問題の影響などで、初場所以来、実に8カ月ぶり、節目の優勝で手にした賜杯は格別だった。

 勝てば優勝、負ければ琴奨菊、稀勢の里と3敗で並び、ともえ戦で優勝が決まる状況だった。相手は2連敗中の日馬富士。場内には日本人2人の優勝を期待して「日馬富士コール」が起きた。異様な雰囲気の上、粘られたが「見ていこうと落ち着いていた」と慌てない。本割で決めるという執念の上手投げで仕留めた。

 9日目に単独トップに立ったが、12、13日目に連敗し、琴奨菊に並ばれた。紗代子夫人は「今までで一番ピリピリしていた」と明かす。13日目の夜には珍しく酒を飲んだ。部屋の後援者に勧められ、ビールをジョッキ2杯。普段、場所中は飲んでも乾杯のコップ1杯だが流れを変えたかった。

 さらに同夜、元横綱大鵬の納谷幸喜氏と電話で話し「しっかりやれよ」と、激励された。2人は今場所前に対談し、その際に歴代最多32度の優勝を誇る同氏が「飲まないと寝られなかった」と話したことが印象的で、その意味が分かった。2場所連続で優勝を逃せない1人横綱の重圧から、千秋楽前夜は珍しく緊張から寝付けなかった。この日は「横綱も1人の人間なのでいい時も悪い時もある」と苦悩があったと認めた。

 大相撲に初めて興味を持ったのは、98年長野五輪開会式。横綱曙の土俵入りをモンゴルの自宅テレビで見た。当時13歳の少年は大横綱に成長した。過去20回優勝した横綱は日本国籍を有していない朝青龍以外、全員一代年寄襲名を認められた(千代の富士は辞退)。白鵬も常々、将来は親方として角界に残りたい意向を示しており、日本国籍取得に動く可能性はある。

 この日のパレードでは、モンゴル相撲で大横綱の父ムンフバトさんを初めて乗せた。「これまでは大横綱ではなかったから」と、肩を並べた実感を持てた。次は優勝22回の貴乃花超えが期待されるが「もう目標にとらえてもいいんじゃないかと思う」と自信の表情。まだまだ白鵬時代は終わりそうにない。【高田文太】