<大相撲初場所>◇11日目◇18日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(26=宮城野)が新大関稀勢の里(25=鳴戸)を圧倒。押し出しで破り1敗をキープした。大関日馬富士(27)を押し倒しで破り全勝の大関把瑠都(27)をぴたりと追走している。この日、新しい化粧まわしが完成。早ければ今日12日目の土俵入りでお披露目する。

 土俵下の新大関を見下ろした。立ち合いで深く踏み込むと、すかさず稀勢の里の右腕を抱えて崩す。相手が立て直そうとする隙に、右のまわしをつかむと一気に押し出した。気鋭の新大関に見せ場さえ作らせず、4秒1であっさりと勝負を決めた。速い攻めに白鵬は「流れですね」。相手の左おっつけについても「去年からそうだけど、持ち味になっているからね」と評価する余裕さえあった。当日券の売り上げ1818枚は今場所最多。館内の声援の大きさが稀勢の里の勝利を期待しているのも知っていた。ため息と歓声が入り交じる中、悠然と支度部屋へ戻った。

 把瑠都を追う立場になったことで強さが増した。優勝争いで追いかけるのは、09年秋場所で横綱朝青龍に後れを取って以来。10年春場所で1人横綱になってからは初めてだったが「追う立場というのはこんなに楽なのかと、久しぶりに感じている」。置かれた状況を楽しんでいる感さえある。「トップは記録との戦い。節目で集中力を要求されるし疲れはあると思う」。多くの場所でトップを走り続けたからこそ、苦しさも知っている。

 この日の午前中、新しい化粧まわしが届いた。横綱が着用するものには銅などを配合した合金の鏡がついている。制作した日下■介(ひょうすけ)さんは「鏡というのは昔から、すべてをはね返し、すべてを写し込むもの」と話す。古来、日本に伝わる三種の神器のうちの1つをつけた。太刀持ち、露払い用には法隆寺の金剛力士像をモデルにした像が刺しゅうされている。白鵬も出来栄えに「素晴らしい。昨日(17日)の負けを忘れて一生懸命やるだけですね」と心機一転した。

 全勝の把瑠都を星1つの差でピタリ。重圧なく追走する白鵬の顔には、逆転への自信が浮かんでいた。【高橋悟史】※■は森の木が水