新大関鶴竜(26=井筒)が、昇進後の待遇に戸惑った。29日、両国国技館での横審稽古総見は横綱、大関を相手に3勝5敗。稽古開始が昇進前より遅く設定され、リズムを崩して、相撲に狂いが生じた。昨年の4倍以上となる7500人もの観衆からは温かい拍手が送られたが、北の湖理事長(元横綱)からも心配された。

 鶴竜が、正直に打ち明けた。「気持ち的な問題がある。ちょっと戸惑っています。悩んでいるところがありますね。気持ちの持っていき方で、自分の相撲が乱れている」。前日、立浪一門の連合稽古に参加して6勝14敗。この日は大関陣と3勝3敗、横綱に2敗。動きのキレを欠いた。

 真面目な新大関らしく、十両が稽古している午前8時50分すぎに登場。しかし、大関陣は関脇以下が終わった10時半ごろから土俵に上がる。「待ってる時間で、気が抜けちゃうところがあった。今まで通りにいこうと思ったら、長かった。体も冷えちゃう」。総見も出稽古も、大関の待遇に戸惑っていた。

 優勝決定戦まで持ち込んだ春場所の勢いがなくなり、北の湖理事長からは「鶴竜はいまひとつ。新大関なんだから、もっと張り切ってほしかった。慣れていないのがあったのかも」と心配された。一方で観衆からは、誰より大きい拍手を浴び、期待感も実感した。

 夏場所の国技館入りは、大関特権として地下駐車場に直接入れる。鶴竜は「親方と相談して決めたい」と慎重だが、車で乗り付け、歩いて門を通ることも考えている。土俵外の忙しさも増し、注目度がアップして勝手が変わる新大関場所。「リズムを崩さないようにしたい」と繰り返した。【佐々木一郎】