<大相撲夏場所>◇12日目◇17日◇東京・両国国技館

 大関稀勢の里(25=鳴戸)が、痛恨の黒星を喫した。東前頭4枚目の栃煌山(25)に寄り切られて2敗目。2勝差だった後続との差が1つ縮まり、一転して大混戦を招いてしまった。依然として単独トップながら、残りは合口の悪い相手との3連戦。栃東以来6年ぶりの日本人優勝へ向け、今日13日目は復調してきた横綱白鵬(27)に立ち向かう。

 完敗だった。稀勢の里は、もろ差し狙いの栃煌山にあっさり2本差された。必殺の左おっつけは、力が伝わらない。右を巻き替えて応戦しようとしたが、寄り切られた。優勝を意識して、硬くなったのか?

 「いや、ないっすよ。硬くなった部分より、完敗です、今日は…」。相撲内容に問題があった。

 先場所に続き、同じ相手に、またももろ差しから崩された。前日の鶴竜戦も取り直しの末に勝ちを拾うなど、不安定な内容が、ついに黒星につながった。栃煌山は「(稀勢の里が)仕切りでいつもより手をつくのが早かった。それで緊張しているのかと感じました」と証言。気持ちの面でも、相手が優位だった。

 まだ単独トップだが、2差から1差に縮まり、余裕はない。残り3日は白鵬、日馬富士、把瑠都と当たる見通し。後続に関係なく、残りを全勝すれば優勝できるが、過去の対戦成績から単純に確率を計算すると、3連勝の可能性は1・64%。データをぶち壊す結果が必要になってきた。

 鏡山審判部長(元関脇多賀竜)は言う。「もったいない。せっかく上が負けているのに。終わってみたら、白鵬が優勝してたりしてな。笑い話にもならない。何やってんだ、ということになる。2差で、逆に緊張したんじゃないか。何度も優勝している人なら、そういうのも分かるけど」。

 欠点を修正し、攻める姿勢を貫けるか。優勝争いで、追われる立場は初めて。この日の朝稽古後、稀勢の里は「落ち着いてはないですよ」と正直に言った。いやでも意識せざるを得ない、初優勝への道のり。勝つか負けるかで、展開が大きく変わってくる13日目の白鵬戦。「思い切っていくだけです」。真価が問われる土俵になる。【佐々木一郎】