<大相撲夏場所>◇千秋楽◇26日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(28=宮城野)が、歴代3位の朝青龍に並ぶ25回目の優勝を決めた。横綱日馬富士(29)を寄り切り、歴代1位を更新する自身10回目の全勝で花を添えた。大相撲史上100回目の全勝優勝となり、30連勝以上を4度達成は大鵬と白鵬だけ。優勝争いを盛り上げた大関稀勢の里をたたえ、名古屋場所(7月7日初日、愛知県体育館)の綱とり挑戦にエールも送った。

 白鵬の強さを示した15日間だった。稀勢の里の負けで優勝が確定し、心に余裕も生まれた。日馬富士との結びの一番。立ち合うとすぐに得意の右四つ。一気に寄り切った。45本の懸賞金を両手で拝み取りして、千秋楽を締めた。

 2場所連続の15戦全勝。自身の持つ記録を10回に伸ばした。外国出身力士では歴代最多の25回目の優勝。大相撲を目指し、01年に来日する前から憧れだった朝青龍に肩を並べた。「目標でもありましたし、入門から関取になっても稽古をつけてもらった。アドバイスももらった。数字で並び、勝って恩返しができた」。

 思い出の一番がある。前頭筆頭の04年九州場所。横綱朝青龍と2回目の対戦。送り出しで破った生涯唯一の金星だ。対戦成績は、13勝12敗。勝って学び、負けて学んだ。今場所前には「朝青龍関の勝負への執念。決着を厳しくつける気迫。私も土俵で見せる」と話したこともあった。14日目の稀勢の里戦も、この日も厳しい攻めだった。

 稀勢の里の実力を認めるからこそ、自分と朝青龍の関係に置き換えていた。14日目の取組前日だけでなく、今場所は自宅に戻ると稀勢の里の映像を繰り返し見た。紗代子夫人は「今までになかったこと」と言う。14日目の全勝対決を偶然とは思っていない。優勝の喜びと同時に「昨日(14日目)の一番は久しぶりに腕に切り傷ができた。男の勲章と喜んでいます」。勝って壁になれたからこそ、国技館の観客に向け「来場所は綱とり。応援してやってください」と呼び掛けた。「日本出身横綱」誕生は国籍を超えて白鵬も願う。稀勢の里のためにも負けられない夏だった。

 「江戸」での優勝も一昨年秋場所以来。4度目の30連勝は「角界の父」と慕う亡き大鵬さんに並んだ。「たいほう」と刺しゅうされた形見の腰ひも。初めて締めてパレードに向かった。「すべては1つ1つの積み重ねです。でも今場所はひと味違いますね」。ライバル出現に充実感を得た夏だった。【鎌田直秀】