<大相撲名古屋場所>◇8日目◇14日◇愛知県体育館

 東前頭3枚目の千代大龍(24=九重)が、横綱日馬富士(29)を立ち合い一発で押し倒した。日馬富士戦は、春場所に続き2戦2勝。前に出る破壊力を発揮し、1横綱1大関を撃破した。稀勢の里(27)の綱とり消滅も、後半戦の新しい主役が誕生した。唯一の無敗を守った横綱白鵬(28)からは、三役昇進のお墨付きをもらった。

 必殺技のかち上げでなく、頭からぶちかました。一発で日馬富士を土俵際に吹っ飛ばした。まわしを取られても関係ない。手も足も出し、体ごと前に出した。わずか2秒7。大歓声とともに座布団が舞った。「テレビでしか見たことなかった。舞うなんて夢にも思わなかった。何個か当たりました。気持ちいいッス」。

 体だけでなく頭も使った。前日には、日馬富士の初日からの取組を全部見た。春場所で初金星を挙げた一番も目に焼き付けた。「師匠(元横綱千代の富士の九重親方)からは思いきり張ってくるぞとも言われた。3月は引いてしまったので、今日は体をぶつけて前に出たのがよかった。火事場のクソ力をもらいました」。この日から人気漫画キン肉マンの新しい化粧まわしで土俵入り。どんな超人をも倒す主人公を体現した。

 場所後に結婚する角野智香さんとは、毎日メールと電話を欠かさない。「こんな僕でも、おはよう、おやすみは連絡するんですよ」とのろける。1月の第1子出産費用確保も約束してきた。この日だけで懸賞金21本。最近はテレビで応援してくれる。「ケガしないでね。早く帰っておいで」と優しい言葉もかけてくれる。心に愛がなければスーパーヒーローにはなれない。

 風呂では白鵬と一緒になった。「いい相撲だった。三役は近いぞと声をかけてもらいました。第一人者から言われて、めっちゃ自信になります」と興奮は冷めやらない。九重親方も「いい相撲だった。あれしかない」と絶賛。大関戦も琴欧洲、鶴竜とあと2つ残る。「まだまだ満足していません。勝ち越したら三賞もらえますかね。もし6勝9敗だったら笑ってくださいね」。初の三賞、三役にまた1つ前進。後半戦の主役から目が離せない。【鎌田直秀】