<大相撲初場所>◇13日目◇24日◇東京・両国国技館

 西前頭10枚目の遠藤(23=追手風)が、関脇琴欧洲(30)をすくい投げで破った。三役力士から初白星で、今場所10勝目を挙げた。初土俵から6場所目での幕内2桁勝利は、79年初場所の長岡(後の大関朝潮)以来35年ぶりとなる最速タイ記録。初の三賞も見えてきた。

 勝った遠藤が、誰より驚いた。ちょんまげも結えないざんばら髪で10勝目に到達した。初土俵から6場所目での幕内2桁勝利は35年ぶり3人目で、最速タイ。先場所まで8年間大関を務めた琴欧洲を破っての勝利に、興奮を隠せなかった。

 「小さいころから相撲を見てて、朝青龍関が好きで興味を持って、その朝青龍関とやってた琴欧洲関に勝てたのが、考えられないというか…。自分でもびっくりしてます」

 立ち合いは、わざと遅れた。仕切り線から離れていた相手を見て「当たりやすい位置に来たら踏み込もうと思った」。身長2メートルを超える巨体を前に、瞬時に判断。ぶつかると、相手の右を封じ左を差した。結果的に押し込まれたが、慌てない。体を開きながら、つかんでいた左下手を離す。すくい投げに切り替えて投げ勝ち、大関復帰を狙う琴欧洲の望みを絶った。

 日大時代にアマ横綱に輝いたエリートも、勝ち続けて来たわけじゃなかった。「小、中学生のころは体も小さくて、勝てない相手もいた。でも、負けても負けても向かっていってたかな」。前日の琴奨菊戦で敗れても、それは同じ。「昨日は何もできなかった。何か1つでもやれたらいいなと思っていた。できて良かった」。初大関戦の悔しさを、平日に詰めかけた1万人以上の客の前で晴らした。

 次は雅山の入門5場所目に続く、6場所目での三賞獲得に期待がかかるが、遠藤は足元を見つめる。「疲れが出てくるころ。勝ち負けとかじゃなく、乗り切りたい」。残り2日間も、全力相撲で土俵を沸かせる。【木村有三】

 ◆最速三賞獲得

 99年春場所、新入幕で9勝を挙げた雅山(敢闘賞)の5場所目が最速。初土俵から6場所目での獲得は、79年初場所で10勝した長岡(敢闘賞)、62年初場所で12勝した豊山(敢闘賞)の2人。