大関稀勢の里(27=田子ノ浦)が「振り子四股」を試した。東京・墨田区の田子ノ浦部屋で本格的に稽古を再開した2日、基礎を徹底。四股を踏む際、上げる脚を1度、軸足の前に通して反動をつけるように掲げた。その姿はまるでヤンキース・イチローの振り子打法。名古屋場所(7月13日初日、愛知県体育館)へ、さらなる改善を図っていく。

 土俵のすぐ外で、稀勢の里の四股が始まった。だが、少しだけ浮かせた足は、すぐ上には掲げない。横にスライド。軸足の前を通過させた。フィギュアスケートのように、体を回転させるのか-。そう思わせた瞬間、付け根が限界点に来た足に反動をつけて、そのまま上へと持ち上げた。まるでイチローの振り子打法を思わせるような「振り子四股」。何度も繰り返した。

 「(意味は)いろいろとね」。初めて見せた、新たな「四股の形」。意図はけむに巻いた。13勝を挙げた夏場所は、場所前に足を高く掲げる形を試すなど、今までの四股に自分なりの改良点を加えた。「大事」という股関節の可動域を広げようとしてきた。今回の試みも、その一環。「何をするにも信じてやるしかないから」とつぶやいた。

 初場所の負け越しなどがたたって、名古屋場所での綱とりムードは今のところない。北の湖理事長(元横綱)は「全勝優勝しても相撲内容による」と厳しい。それでも「やることをやるだけです。いつも通り、やるだけ」と稀勢の里。その「いつも通り」に、プラスアルファを加える作業が始まった。【今村健人】