3連覇している広島の強さが際立った試合だった。「何が際立った強さなのか?」と聞かれれば、とにかく選手個々のジャッジメントプレーに抜け目がない。成熟したチームの強さを感じさせた。

クイックモーションの苦手なヤングマンに対しては、すかさず盗塁。ただ走るというのではなく、2度の盗塁は初球と2球目に決めたもの。走れる投手からは、早いカウントで走るという鉄則を忠実に実践している。4回2死三塁からの1点は、とんでもない暴投で転がり込んできたように思うだろうが、打席の田中広は2球目にセーフティーバント(結果はファウル)を試みている。前に突っ込んで投げるヤングマンに対しては有効な攻め。制球が乱れやすくなる。ワンバウンドのとんでもない暴投になったのも、このセーフティーの効果があったからだ。

7回2死三塁からの1点も大きい。サイン違いによる捕逸で二塁走者が三塁に進んだ直後に、野間がセーフティーバント。普通に捕っていればアウトだが、動揺していた戸根はお手玉。大きな追加点になった。

抜け目のなさは、守備でも同じ。5回1死二塁では、床田のターンけん制で二塁走者の石川がアウト。広島投手陣と内野陣は、伝統的にこのけん制がうまい。私も中日時代には、広島戦の前に「二塁けん制は気を付けろ」としつこいぐらいに言われていた。アウトになっていなければ、坂本勇のソロは同点2ランとなっていただけに、絶妙なタイミングのけん制球だった。

巨人と単純な打力、投手力を比較しても、若干だが広島が上だと思う。それに加え、選手個々のジャッジメントプレーが上回っているのだから、この試合のような得点差以上の戦力差を感じてしまう。まだ5月ではあるが、セ・リーグ全球団で「広島包囲網」を敷かなければ、昨年のように独走を許してしまうだろう。(日刊スポーツ評論家)