矢野阪神の自力Vの可能性が早くも消滅した。阪急黄金時代を築いた284勝サブマリンで、元中日監督の山田久志氏(70=日刊スポーツ評論家)が、元気のないチームにカツを入れた。まだ残り57試合ある。このまま巨人の独走を許していいのか。厳しい提言で奮起を促した。【取材・構成=松井清員】

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阪神は何と言っても初回の攻撃が悔やまれる。立ち上がり不安定だった松坂から連打と足で揺さぶり、無死一、三塁と攻めた。だが糸井がカウント2-0から、打ち損じて浅い中犠飛。近本でなければ、かえれなかった。ならば4番大山、5番陽川頼むぞとなるところで、凡打と盗塁死で結局1点しか取れなかった。チャンスで中軸に回り、少なくとも2、3点は取れたはずが拙攻で松坂を生き返らせ、5回を投げ切らせる形になった。糸井以下がヒットでつないでいれば、松坂は早々にKOできただろう。

初回の攻撃が象徴で、特にこの5連敗中はゲームが重過ぎる。岩田も援護が期待できないから慎重な投球に終始していたし、投手陣に相当な負担がかかっている。藤川やジョンソンらのリリーフ陣も報われない連投が続く。この状態を早く脱却しないと、この先の夏場は投手陣が持たないよ。

攻撃陣も糸井や新人の近本に引っ張られているようではいけない。この日のスタメンでいえば、大山、高山、陽川あたりが結果を出してグイグイ引っ張っていかないと。北條もそうだ。代打起用の可能性が分かっているのに、ドン詰まりの凡打はいただけない。他の選手がヒットを打ってガッツポーズする時間があるなら、原口らのようにベンチ裏でバットを振ってしっかり準備しておかないと。

今、求められるのは、楽しくやることではない。打席での気迫、体中からわき上がる闘志、激しさだ。凡打しても淡々、打席での立ち居振る舞いはあまりにも寂しいし、これでは相手投手も怖くない。チームを上げていくには一にも二にも、打線が上向かないとどうしようもない。投手陣が持ち堪えているうちに、1人1人が気迫も込めて、状態を上げていくしかない。

2位以下が借金のシーズンはなかなかない。巨人が強いのではなく、他の5球団が情けない。阪神は1日も早くこの底を脱しないと、またズルズルいってしまう。まだ57試合もある。自力優勝が消えたウンヌンを言う前に、しっかりチームを立て直すことが先決だ。

中日対阪神 7回表阪神1死、代打北條(左から2人目)は遊ゴロに倒れベンチへ引き揚げる、左端は矢野監督(撮影・加藤哉)
中日対阪神 7回表阪神1死、代打北條(左から2人目)は遊ゴロに倒れベンチへ引き揚げる、左端は矢野監督(撮影・加藤哉)