千賀に尽きる。この日のゲーム展開で、先発が千賀でなかったら、完敗していたかもしれない。

打線が3回まで7安打を放ちながら、1点も取れなかった。2、3回は連続して満塁のチャンスをつぶした。野球の流れでいえば、その後に点を取られて負けるのがパターンだ。しかし千賀は1人で流れに立ち向かった。4回まで西武打線をパーフェクトに抑え、まったくつけいるスキを与えなかった。自分がマウンドにいる限り、流れを渡さない。そんな気迫に満ちた投球だった。

7回1死二、三塁での連続三振は見事としかいいようがない。栗山に対しては、バットに当てられて、ゴロでも三塁走者はスタートを切る。1点もやれず三振しかない場面で、フォークで三振を奪った。前の打席で直球を初安打されていただけに、気合も十分だった。ピンチを脱し、逆にソフトバンクに流れを引き寄せた。直後の8回の2得点は千賀の踏ん張りの結果だ。

マジックは点灯したが、喜んではいられない。この日打線を組み替えて13安打はしたが、3点しか取れなかった。組み替えがうまくいったとはいえない。これからはクライマックスシリーズ進出の可能性が低い日本ハム、オリックス戦が5試合ずつ残っている。日本ハム有原、オリックス山本など好投手との対戦や、個人成績を狙う好打者が相手となる。チーム成績が優先されない、ノープレッシャーのチームの方が逆に怖いと思っている。打線は、大一番で千賀に助けられた借りを、残り試合の奮起で返してほしい。(日刊スポーツ評論家)

西武対ソフトバンク 8回表ソフトバンク無死、先制の左越えソロ本塁打を放ったグラシアル(右手前)を笑顔で迎える千賀(中央)(撮影・鈴木みどり)
西武対ソフトバンク 8回表ソフトバンク無死、先制の左越えソロ本塁打を放ったグラシアル(右手前)を笑顔で迎える千賀(中央)(撮影・鈴木みどり)