パ・リーグの首位攻防第3戦は、首位ソフトバンクが2位ロッテにゼロ封勝ちし、ゲーム差を2に広げた。

日刊スポーツ評論家の上原浩治氏(45)は、この試合のポイントにソフトバンク和田毅投手(39)の尋常でない“しぶとさ”を挙げた。ロッテ美馬学投手(34)との投げ合いを制した粘り強さが表れたシーンは、果たしてどこだったのか-。

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久しぶりに和田の投球をじっくり見させてもらったが“さすが”と思わせる内容だった。この試合の球審はストライクゾーンが狭く、ピッチャーにとっては過酷な展開になったが、5回を無失点。持ち前の粘り強さは、健在だった。

“さすが”と思わせる粘りは、初回から発揮していた。1死から、2番中村奨には際どい球をボールと判定されて四球。この時点で「今日の球審はストライクゾーンが狭い」と感じたはず。2死後も4番の安田に対し、10球も粘られて四球。ストライクゾーンが狭くて有利になる投手はいない。説明するまでもないだろうが、特に和田のようにコーナーを突いて打たせて取るタイプの投手にとっては不利になる。

嫌な感じが漂う中、続く井上にも3ボール。特に2球目の外角低めの直球は、本人も顔をしかめたように、最高の球だった。ギリギリのストライクだと思った球がボールに判定されると、投手はそれより内側を攻めようとする心理が働く。直後の球は甘くなりやすいが、和田の投球は違った。3ボールにはなったが、そこから三振に打ち取り、無失点で切り抜けた。

1回表、井上に対する和田の配球
1回表、井上に対する和田の配球
ソフトバンク対ロッテ 1回表ロッテ2死一、二塁、井上は空振りの三振に倒れる。投手はソフトバンク和田(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対ロッテ 1回表ロッテ2死一、二塁、井上は空振りの三振に倒れる。投手はソフトバンク和田(撮影・梅根麻紀)

3回も、先頭打者の西巻を2ストライクに追い込んだ後の4球目、外角高めの直球がボール判定。ここでも不満そうな表情を浮かべたが、次の球も甘いコースには投げなかった。結果、9球を投げて四球。2死後からも四球を出したが、3番マーティンを打ち取って得点を許さなかった。

3回表、西巻に対する和田の配球
3回表、西巻に対する和田の配球

一方の美馬も、和田よりは球威があるが、制球力を駆使して打たせて取るタイプ。7回を投げて3失点は上出来で、粘り強く投げていた。それでもボール判定に不服そうな表情をした場面が2回ほど見受けられた。1回2死一、二塁からのグラシアルの初球と、3回2死二塁での柳田への2球目で、次の球はともにストライクゾーンに投げている。グラシアルは遊飛に打ち取ったが、柳田には右前打。美馬の投球は決して責められない。むしろ和田の“しぶとさ”は尋常でないのが分かるだろう。

1回裏、グラシアルに対する美馬の配球
1回裏、グラシアルに対する美馬の配球
3回裏、柳田に対する美馬の配球
3回裏、柳田に対する美馬の配球
ソフトバンク対ロッテ 3回裏ソフトバンク2死二塁、柳田は2球目の内角球を見送る。投手はロッテ美馬(撮影・梅根麻紀
ソフトバンク対ロッテ 3回裏ソフトバンク2死二塁、柳田は2球目の内角球を見送る。投手はロッテ美馬(撮影・梅根麻紀

試合はソフトバンクが勝利。和田、美馬の両投手はよく投げたが、野球は点を取らないと勝てない。ロッテの打者は選球眼がいいが、やはりヒットを打たなければ得点は難しい。3回無死一塁で打者藤原の場面。初球スライダーがボールになってエンドランを仕掛けるが、低めのフォークかスライダーを藤原は空振り。一走の西巻は二塁でアウトになった。空振りした藤原は、何とか当ててやろうというスイングではなかった。まだ経験が浅く、仕方がないのかもしれないが、主力が抜けた穴の大きさを感じさせた。

私自身も9月下旬にコロナに感染したが、元気でいながら試合に出られない選手の気持ちは痛いほど分かる。感染リスクを考慮すれば隔離は仕方ないが、メジャーのように試合そのものを中止してもよかったと思う。こうなると、層の厚いチームが絶対に有利。中止になった試合は、ダブルヘッダーで補えばいいと思う。コロナの痛手の大きさを感じ、残念な気持ちになった。(日刊スポーツ評論家)