ソフトバンクの盗塁王、周東はCSこそ盗塁できなかったが、日本シリーズでは当然ながらこの足がカギを握る。周東の素晴らしさは足が速いこともあるが、他の選手と大きく違うのはスライディングだ。多くの選手はスライディングしてベースに着く足は得意な方で決まっているが、周東は左右どちらでもできる「スイッチ・スライディング」が武器でもある。

今季の50盗塁を振り返ると、滑り込んだ48盗塁のうち右足が27で、左足が21。ほぼ同じである。さらに優れているのが、スライディングする足を直前で変えられることだ。「世界記録」にもなった13試合連続盗塁。12試合目の10月29日ロッテ戦では、捕手の送球が周東から見て右側にそれたため、それをよけるように左足で滑り込んでいる。

右足のタイミングのように見えたが、送球を見て切り替えている。右足でいけば、体にタッチされると本能で察知したからか、即座に「逃げる」判断をしている。滑り込んだ後、ベースを少しオーバーしてしまったことが、少々無理なスライディングだったことを証明している。高校時代から身につけた得意技は、プロで磨きがかかっている。

さらに今季は決断力も成長した。盗塁は「行く勇気」はもちろん、「行かない勇気」も必要になる。今季の周東はこれを持てるようになった。行きかけてやめることが多かった印象がある。今季の盗塁失敗は6。8割9分3厘と、9割近い盗塁成功率は「スイッチ・スライディング」と「行かない勇気」が大きな要因となっている。

盗塁を決めた後、周東がそのまま得点したケースは19度ある。その試合の勝敗は15勝2敗1分け。1番周東が出塁し盗塁を決めて得点すれば、かなりの確率で日本一になれる。(日刊スポーツ評論家)

10月18日、楽天戦で二塁盗塁を決めた周東
10月18日、楽天戦で二塁盗塁を決めた周東