今日の評論は、ある意味今年のキャンプ取材の難しさを端的に表していると感じた。

宮崎から沖縄に取材地を移した初日。本来なら名護での日本ハム対阪神の練習試合を見る予定だったが、朝からの雨で中止となった。これは毎年のことで天候で試合が中止になるのは珍しいことではない。

雨天のグラウンドで作業をする阪神園芸のスタッフら(撮影・上山淳一)
雨天のグラウンドで作業をする阪神園芸のスタッフら(撮影・上山淳一)

だが、室内練習場での取材が今年は厳しい側面がある。感染症予防の観点から、室内での取材人数は制限される。これは仕方ないことで、今回は報道各社一人という割り当てとなった。それなら、ほかの球場を訪れようと考えたが、条件はどこも同じ。室内練習場には人数制限がかかり、そうなると評論家よりも担当記者が取材するケースが多くなる。

朝から各担当記者と連絡を取り、唯一の可能性を見いだしたのが楽天だった。金武は強風だったが、午前中はまだ小降りの雨。しかも、田中将大が全体練習に合流した初日は、投手陣がメイングランドでアップするメニュー。急きょ楽天担当に取材が可能か確認してもらい、広報が柔軟に対応してくれたことで、何とか9時半過ぎに金武の楽天キャンプ地に到着。アップから取材した。

今年は、各球団の受付で陰性証明を提示する必要があり、それも球団を訪問する○日前、もしくは○時間前の陰性証明書など、有効期限が設けられている。それに合わせてPCR検査を受け、メールによる陰性証明を待ってから取材に訪れている。

仕事とは言え、定期的に検査を受けられ、そして、スムーズに陰性証明書を発行してもらえるから、取材できる。感染症にかからない、うつさないという大原則を徹底しつつ、取材人数の制限なども順守しながらの取材。宮崎にしろ、沖縄にしろ、決して楽観できる状況にはない。無観客キャンプという特殊性に接すると、制約はあってもこうして選手の動きを生で確認し、それを野球ファンに届けることができるのは、私たちにとっても最低限の役割だと痛感する。

ブルペンで投球練習をする楽天早川(撮影・菅敏)
ブルペンで投球練習をする楽天早川(撮影・菅敏)

つまり、この日私が自信を持って皆さんに言えることは、「マー君は元気に練習していた」「早川はバランスよく投げていた」ということ以外にはない。もちろん、できればそれ以上の情報をお伝えできればそれに越したことはないが、自分の目で確認したことから派生して、想像だけで評論まがいな文章は書けない。こんなの評論ではないという厳しいご指摘も聞こえてきそうだが、現地に足を運び、できうる限り見て、感じて、考えた結果がこの内容になったということを、胸を張って言いたい。

感染症対策と向き合いながら、何とかここまで大きなトラブルもなくキャンプは続いている。まさに薄氷を踏む思いのキャンプであり、キャンプ取材である。それもまた21年の春季キャンプのリアルな一面であることをお伝えつつ、この日の楽天からの評論原稿をお届けしたい。(日刊スポーツ評論家)

キャッチボールをする楽天田中将は、鋭い目でボールを見つめる(撮影・菅敏)
キャッチボールをする楽天田中将は、鋭い目でボールを見つめる(撮影・菅敏)