楽天田中将の日本復帰後、3度目の登板で注目したのは左足だった。私自身も経験したが、メジャーリーグと比べ、日本のマウンドは軟らかく、着地した左足がなかなか固まらず、苦しんだ。特に、私や田中将のように下半身をしっかり使って投げる投手は、左足の安定がリリースポイントの安定にもつながり、コントロールにも直結する。

3度目の登板に加え、バンテリンドームのマウンドは硬めで、日本の中ではメジャーに近いといわれる。試合前の時点で、課題はクリアすると予想したが、力んだ時以外は速球、変化球ともにほぼ思い通りに投げ込んだ。初登板だったキャンプ地(沖縄・金武町)のマウンドは軟らかく、着地後に左足が動く場面も見られたが、この日は解消され、フォームも安定した。

この時期、田中将クラスの投手は「抑えた」「打たれた」ではなく、自らのテーマを遂行したかがポイントとなる。70球のうち、変化球(スライダー、スプリット、カーブ)は計44球。球種の内訳からも変化球の軌道や対打者の反応を確認したのは明らかで、4イニング目の7回は3つのアウト全てをスライダーで奪った。

開幕に向け、メジャー式の調整で順調にステップアップする。メジャーの投手はブルペンでは投げ込まず、実戦の中でイニングや球数を増やし、1つの1つの課題を消化する。この日の投球は外から見る人間にもテーマ、意図が分かる投球で、次の登板あたりから、シーズン仕様の田中将が見られるのではないだろうか。(日刊スポーツ評論家)