2000試合にふさわしく、両軍ともに見どころが多かった。

特に阪神のルーキー佐藤輝明内野手(22)は「伝統の一戦」の新時代を築き上げることを予感させる打撃だった。 好きなゾーンはベルトから膝上の間。打てる球を仕留めにかかり、高めは一切手を出さなかった。開幕当初は相手に攻められて打てない所を、どう打つか躍起になっていた。だが今は1歩引き、ゾーン内の打てるところを振っている。巨人サンチェスの直球の精度が悪く、内角に連投することが難しい状況だったこともある。だが私が捕手をしていたらと想像しても、どう攻略するか頭を悩ませた。

もちろん、まだ高みを目指せる。変化球への意識が強く、スイング時に拳1つ分ほどバットのヘッドが下がる。落ちる軌道の変化球に対し、打てる接点の範囲を広げようとすれば、ヘッドが下がってラインに入れて合わせようとする。3本の二塁打はいずれも変化球だったが、第3打席の左飛は内角直球に対し、ヘッドが下がる分、少しこすれ気味になった。ヘッドが立つようになれば、より強く捉えられ、紙一重の打球とも言える。こういうステップをクリアし、どんな打者に成長するか本当に楽しみだ。

両ベンチの、しのぎあいも長年のライバル同士ならではだった。巨人が初回2死一、三塁で重盗を仕掛けた。守備における重盗の対処は(1)セカンドスロー(走者を見ずに二塁送球)(2)ワンルック(三塁走者を目でけん制して二塁送球)(3)ピッチャー返し(投手に返球し、三塁走者をつる)(4)サードスロー(三塁送球で三塁走者の意表を突く)(5)ノースロー(二、三塁を受け入れる)。この状況のセオリーは(1)(2)で阪神は(1)を選択。梅野も投手のやや頭上を投げ、三塁走者の梶谷も送球が投手頭上を通過してから突入しては本塁は間に合わないというミスのないプレーだった。

だがそれ以上に巨人ベンチが責任を負い、梅野の送球と同時にスタートさせて得点につなげた。初回の重盗はなかなか見ることがないプレーだ。この成功で阪神矢野監督は今後一、三塁の状況でより警戒するだろうし、逆に攻撃で重盗を仕掛けようとするかもしれない。今後も続く伝統の一戦でも伏線となるワンプレーになった。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 1回裏巨人2死一、三塁、打者スモークの時、一走の丸が盗塁を試み、アウトととなる間に三走の梶谷が生還する(撮影・横山健太)
巨人対阪神 1回裏巨人2死一、三塁、打者スモークの時、一走の丸が盗塁を試み、アウトととなる間に三走の梶谷が生還する(撮影・横山健太)