最下位に沈む広島に、カード初戦に続いて取りこぼすわけにはいかなかった。

吉田 7回に矢野監督が自らマウンドの伊藤将のもとに足を運んだ行動は、苦しいリリーフ事情もあるし、この一戦に賭けていた気持ちの表れでしょう。松山の凡打にも助けられ、大事な試合に勝ててほっとしてるはずです。ここからはいかに選手を見極め、信頼して起用するか、監督としての力量にかかってきます。

5回は坂倉、林の連打で無死一、三塁。野間の遊ゴロを処理した中野はそのまま二塁ベースを踏んで封殺、次の瞬間、一塁ではなくホームに送球して三塁走者の坂倉をタッチアウトにした。

吉田 中野の好判断でした。野間の打球が二塁寄りに転がった瞬間、わたしはどうするかなと思ってみていた。とっさに坂倉のスタートが遅れたからです。プレーの流れは「遊-二-一」だが、中野は二塁をアウトにした後、本塁に投げた。坂倉もまさかと思ったでしょう。なぜあのプレーができるかというと、試合に出続けて経験を積んでるから、あの判断ができるんですわ。好守備もあるが、たまに横着なプレーもします。気を抜いたら、自分が抜かれる。上のレベルをみたらきりがない。でも試合に出し続けて、さらに技術を磨いてほしいと思います。

終盤の7、8回で広島を突き放したのは、糸原、マルテ、サンズが打点を挙げた働きだった。

吉田 開幕からチームを引っ張ってきたのはマルテとサンズです。特にサンズの勝負強さは際立った。東京五輪開催で、イレギュラーな日程の今年は残り10試合が大きな区切りになる。サンズも、中野も信頼して使い続けることです。【取材・構成=寺尾博和編集委員】