ソフトバンク千賀滉大投手(28)が、左足首の靱帯(じんたい)損傷から3カ月ぶりの1軍マウンドとなったロッテ戦(ZOZOマリン)で、自己ワーストの10点を失い、3回途中でKOされた。緊急招集された侍ジャパンの東京五輪へ不安の残る登板。里崎智也氏(45=日刊スポーツ評論家)は「このままでは五輪で戦力になるのは厳しい」と厳しく評価した。

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侍ジャパンに追加招集されたソフトバンク千賀の1軍復帰登板に注目していたが、このままでは五輪で戦力になるのは厳しいと感じた。痛めた左足の影響は、フォーム的には感じなかった。ただ、推察するに「投げられる体の状態なら1軍で投げさせよう」というような調整の途中で出てきた印象。直球も変化球も制球しきれず、真ん中に集まった。158キロの球速は出ていたが、ロッテの打者がことごとく仕留めた反応を見ると球威もなかったのだろう。球速が15キロ以上遅いロッテ二木の方がコーナーに投げきれていて、打者を差し込めていた。調整途中の投手とローテーションをまわっている投手の差だと思う。

千賀は2回2/3を投げ77球。五輪までに長いイニングを投げられる先発機会はあと1度とみられる。今の調整ぶりからして、先発投手としての調整が間に合うとは思えない。24日と25日の侍ジャパンの壮行試合では、他の投手の調整にもイニングを割かなければならず、千賀を最優先にはできないだろう。リリーフにしても、この日のような制球力では厳しい。五輪本番でどういう使い方をすればいいのか。現状では見えてこない。

本来の力が戻っていない投手ばかりを選ぶから、こういう不安が出てくる。先日の巨人菅野もそうだが、不調の選手は選ぶべきではなかったと思う。今大会の代表選手24人のうち11人の投手を選んでいるのも、不調の投手を選んだしわ寄せだと推察している。東京五輪の試合数は少なくて5試合、多くても8試合。08年の北京五輪では最高9試合だったにもかかわらず10人でまかなえている。1人投手を多くしている分、野手の駒が減り、攻め手を狭める可能性があるのは否めない。

いずれにしても最終選手登録は済ませており、故障者でない限りは入れ替えもできない。このメンバーで、どうやって金メダルを取るか、応援する立場としても、前を向くしかない。千賀は次回登板で、どこまで調整段階を上げられるか。1軍の試合で投げるならチームのために結果も必要となるだけに困難なミッションになる。東京五輪で長いイニングを投げるのは無理かもしれないが、強い球をコーナーに制球できるまで、調整を進ませて本番を迎えてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

ロッテ対ソフトバンク 3回裏ロッテ2死二塁、交代を告げられマウンドで頭をかく千賀(中央)(撮影・垰建太)
ロッテ対ソフトバンク 3回裏ロッテ2死二塁、交代を告げられマウンドで頭をかく千賀(中央)(撮影・垰建太)