侍ジャパンの宿敵ともいえる韓国との準決勝は、予想通り激戦になった。最後は地力の差が出たともいえるが、試合内容は5-2という得点差より僅差だった。私自身も国際大会では韓国と何度も戦った。正直に言うと、当時に比べればやや力は落ちたとは思うが、やはり強敵だというイメージは変わらなかった。

日本対韓国 4回表を終え、好守の甲斐(右)にマスクを渡す山本(撮影・河野匠)
日本対韓国 4回表を終え、好守の甲斐(右)にマスクを渡す山本(撮影・河野匠)

どう見ても力は侍ジャパンの方が上だが、初見のチームとの戦いは力通りにはいかないもの。強いとされるチームは、どうしても手堅くなりがちだし、劣勢のチームは思い切りよく戦えるメリットがある。特に投手の立場で言うと、慎重になってしまう。今試合の先発・山本は日本NO・1の投手。同点に追い付かれた6回は、先頭打者の朴海旻にはカウント1-2から高めに浮いたカットボールをレフト前に打たれた。続く姜白虎にもカウント1-2から低めのフォークをレフト前のタイムリー。3連打目の李政厚にも、フルカウントからコースはやや甘くなったが低めのフォークをライト前へ運ばれた。

打たれたのは全部、変化球。姜白虎への2球目に内角の真っすぐがあったが、インハイへの攻めではない。2番手でリリーフした岩崎も、同点タイムリーを打たれたのは外角のスライダー。カウント2-1で、見逃せばボールゾーンに逃げるスライダーだが、うまく打たれてしまった。

日本対韓国 6回表途中に日本2番手で登板した岩崎(撮影・河野匠)
日本対韓国 6回表途中に日本2番手で登板した岩崎(撮影・河野匠)

山本にしても、岩崎にしてもいい変化球は持っているが、それを生かしているのは真っすぐ。山本の真っすぐは説明するまでもなく威力満点。岩崎の真っすぐも浮き上がるような軌道で、初見のバッターが簡単に対応できるような真っすぐではない。もっと自分の持ち味を生かすような投球でよかった。

逆に韓国は8回2死満塁、山田に初球の真っすぐを走者一掃の決勝二塁打を打たれた。打った山田は見事だが、真っすぐの強い山田に対し、初球から真っすぐで入るのは危険だった。格上の相手に対し、真っ向勝負をしすぎた感じがした。一塁ベースカバーに入った投手がしっかりベースを踏んでいれば、このイニングでの勝ち越しはなく、紙一重の勝負ではあったが、最後は力の差が出たといっていい。

日本対韓国 7回表に日本3番手で登板した伊藤(撮影・河野匠)
日本対韓国 7回表に日本3番手で登板した伊藤(撮影・河野匠)

先ほども指摘したが、初見の対戦が多い国際大会では、どうしてもバッターの得点力は計算しにくい。やはり侍ジャパンの一番の強みは、投手力だろう。そういう意味では3番手で投げた伊藤は、真っすぐとスライダーのコンビネーションで韓国打線を力でねじ伏せた。どの投手も自分の力を信じて、思い切った投球を心掛けてほしい。そうなれば、悲願の金メダル獲得は実現すると思う。(日刊スポーツ評論家)