プロ野球は13日、東京五輪による中断期間を経て約1カ月ぶりに再開する。セ・リーグの優勝争いは、首位阪神が2位巨人と2ゲーム差、3位ヤクルトも2・5ゲーム差の大混戦。98年横浜日本一監督の権藤博氏(82=日刊スポーツ評論家)が、後半戦を展望した。【取材・構成=松井清員】

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簡単に言えばね、両チーム強いってことです。巨人も阪神も力があるからこういう戦いになるんですよ。2ゲーム差は、五分です。連勝連敗、2試合で追いつくわけじゃないですか。巨人は逆転するとかいう発想は持っていないと思いますよ。7ゲームなら必死に逆転しなきゃいかんと思うでしょうけど、2ゲームまで迫ったら、背中は目の前。あとは自分たちの戦い方ができるかが勝負ですから。

阪神は前半最後に失速したけど、逃げよう逃げようと思って戦ってはいけない。ここまで勝ってきた自分たちの野球ができるか。どんなに悪くても、5割をキープしながら貯金を増やしていけるか。この1カ月が勝負だと思います。今回は五輪で1カ月の中断があったので、特に後半最初の3カード9試合が大事ですね。これはどのチームも同じだけど、ここを5割以上でいけたら、1カ月の五輪ブレークも大丈夫だったとなる。でも始まった、準備できてないとバタバタして負けが込むと慌てますから。

阪神と巨人の対戦は今季、巨人の8勝7敗で五分五分です。当然、残り10試合の直接対決が持つ意味は大きいです。もちろん2ゲームなんて他チームとの対戦でもすぐ縮まる。阪神も巨人も持てる力を出し合えば、最後まで息の抜けない2強バトルが続くはずです。

3位ヤクルトにも可能性? 可能性って何か冷たいですね。2・5ゲーム差ですよ。10ゲーム離されているならまだしも、2・5だから3つの輪の中に入っているんです。ヤクルトは強力打線と後ろの投手が良くなりましたからね。打ち勝って、抑えて勝てる戦力を持ったことが強くなった理由です。これまでは、打っても打っても後ろが打たれて負けていましたからね。貯金なんか作れなかったけど、作れるようになったことが大きい。まあ、三つどもえに近いし、どこまで割りこんでいけるか。でも本線は阪神と巨人でしょう。

巨人の選手が優勝経験は豊富といっても戦ってる時は、優勝経験なんて全く関係ないんですよ。優勝経験の差で負けたってよくいうけど、現実の力で負けたんですよ。過去の優勝なんて、戦ってる間は何のプレッシャーにもならないし、たとえば巨人が昨年も一昨年も勝ったから、今年も大丈夫なんてことは全くない。阪神が05年以来優勝が遠ざかっている、優勝メンバーが1人もいないといっても、大事なのは今の戦力がどうかということですから。

ズバリ、私は阪神が優位だと思います。巨人も背中を痛めている中川や菅野が戻ってくれば面白くなるでしょうけど、阪神は巨人より中継ぎ、抑えの投手がしっかりしている。打線もクリーンアップ、外国人選手が充実しているし、4三振しても次の日に本塁打を打てる佐藤輝もいる。穴はないですね。優勝に向かって突き進むには、万全の戦力ですね。ただ問題は、いつも言う守りですね。ここから守りの破綻を出さないこと。くだらないエラーっていうか、危ないんですよ、阪神はやりそうで。これが出なかったら勝てると思いますね。シーズン終盤はミスした方が負けですから。

○…権藤氏は東京五輪で2試合とも痛打された青柳にエールを送った。「打たれはしましたが、いい経験をしたと思います。青柳は本来、中継ぎではなく、先発ローテの投手ですからね。そういう点では起用ミスですよ。中継ぎ、抑えのリリーフ投手がいたのだから、それを使うべきだった。だから青柳はいい経験をしたということ。今度先発に戻って投げる時は、楽とまでは言わないけど、あの苦しみからしたら、もう思い切っていこう、と前向きな投球ができると思います」。五輪の経験がシーズンではプラスに働くとみている。

◆権藤氏によるセ・リーグ後半戦展望は、日刊スポーツのYouTube公式野球チャンネルで絶賛公開中です。紙面で紹介しきれなかったトークもありますので、どうぞお楽しみ下さい!