ヤクルトは優勝、巨人はCS出場がかかっていたが、ワンサイドゲームになってしまった。初回、巨人に4点が入ったことで緊張感に欠けてしまったが、得点差以上に現在の両チームの状態を象徴するような試合だった。

まず巨人だが、菅野が中10日で先発。勝ち星こそ9月19日の阪神戦以来になったが、10月に入ってからの投球はそれなりの内容だった。力投型で、間隔が空いた方がいいタイプ。今試合はコーナーを丁寧に突いた本来の投球ができていた。

試合間隔が空くのは、チームにとってもメリットがある。先発投手の高橋が2番手でリリーフできるし、登板数の多かったリリーフ陣も余裕を持って起用できる。投手陣の駒不足もあるのだろうが、勝てそうもない試合ではもっと早くから、投手陣の負担を考えて起用していれば、違った戦い方ができていたと思う。

一方のヤクルトは、試合間隔が空くと“もろさ”が出てしまう。チームの特色は、破壊力ある打線で打ち勝つ野球だが、相手にいい投球をされると、思うように得点できなくなる。選手層もそれほど厚いわけではない。残り試合は少ないが、想像以上に苦しい戦いになっている。

つくづく感じたのは、延長戦のない今季のルールが、ヤクルトに有利に働いたという点。投手層が薄いチームにとって、延長戦がないのは数字以上にありがたいもの。同点で終盤戦に突入すると、中継ぎ投手は準備が必要になるが、9回で打ち切りとなれば話は別。ブルペンで投げる必要のない投手が増える。もちろん、投手起用をはっきりさせたベンチワークも良かったのだろう。弱点をカバーする戦い方ができた。

ただ、今後を想像すると、厳しい戦いになりそう。ヤクルトには軸と呼べるような「スーパーエース」が不在。万全な状況でのエース対決になると、不安要素が大きくなる。ただでさえ短期決戦の勝敗は、打力よりも投手力の差がモノを言う。ペナントでは混戦が有利に働いたが、短期決戦となるポストシーズンは、シーズン中のような戦いができなくなる可能性が出てくる。

巨人はこの勝利でCS出場が決定。投打にわたり、短期決戦を見据えて立て直せる期間ができた。ヤクルトはもう1度、集中力を高め、打線が奮起しないといけない。ここまで打ち勝ってきた野球を思い出して、いい試合を見せてほしい。(日刊スポーツ評論家)

巨人対ヤクルト 1回途中で降板するヤクルト先発の石川(手前)(撮影・足立雅史)
巨人対ヤクルト 1回途中で降板するヤクルト先発の石川(手前)(撮影・足立雅史)