阪神が今季初の3連勝を飾った。難敵の中日大野雄大投手(33)を攻略し、逆転勝ちした。2点を追う4回、6人合わせて、わずか9球で3点を奪い逆転した。

日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)が解説する。

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阪神は2点を追う4回裏、ようやく「相手が嫌がる野球」を体現できました。先頭の3番中野が中前打で出塁した直後の攻撃。打線が点ではなく線でつながったことで、中日大野雄に大きなダメージを与えたように映りました。

無死一塁から4番佐藤輝が軽打で右前に運び、無死一、三塁。5番糸井さんは一、二塁間を破る適時打で、再び無死一、三塁に持っていきました。両打者とも初球を丁寧に引っ張った当たり。最低でも一塁走者を二塁に進める、そんな意図が「チャンスが終わらない攻撃」を生み出しました。

1点差に迫り、なおも無死一、三塁。ここでは首脳陣の読みも光りました。打席には長打は期待しづらい6番山本。大野雄からすればまずは簡単にストライクが欲しいところで、今度は初球からセーフティースクイズです。これが中日守備陣の動揺を誘い、内野安打に。この回打者4人がたった5球で同点とし、最後は前進守備の内野ゴロで勝ち越し。大野雄は相当にストレスがたまったはずです。

現状、阪神には大砲が佐藤輝しかいません。マルテは2軍でリハビリ中。左足を負傷した大山もいつスタメンに復帰できるか分かりません。そんなチーム状況で難敵の大野雄を攻略するには、スモールベースボールしか考えられませんでした。開幕からの1カ月間は「打てば勝つ」「打てなければ負ける」といった戦い方にも見えましたが、この日は違いました。

1人1人が役割を全うして後ろにつなぐ。単打や進塁打、内野ゴロで得点を積み重ね、投手を疲弊させていく。「相手が嫌がる野球」を取り戻せたことは大きな収穫です。今季初の3連勝。個々の力に頼れない状況でも勝てる方法を見つけられれば、このまま終わるチームではありません。(日刊スポーツ評論家)

阪神対中日 中日に勝利しナインとタッチを交わす阪神佐藤輝(撮影・和賀正仁)
阪神対中日 中日に勝利しナインとタッチを交わす阪神佐藤輝(撮影・和賀正仁)