日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)が13日、昨季まで2年間在籍したロッテの後輩でもある佐々木朗希投手(20)の投球を初評論した。本調子ではなかったオリックス戦を7回1失点にまとめた修正力に成長を感じ取り、ルーキー松川虎生捕手(18)の洞察力も絶賛。今季4勝目を「バッテリーの共同作業の勝利」と表現した。【聞き手=佐井陽介】

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ロッテ松川捕手の洞察力はとても18歳とは思えませんね。相手が変化球待ちなのか、直球待ちなのか。本当によく打者を観察できていて驚かされました。この日は「佐々木朗希投手が良くて勝った」というよりは「バッテリーの共同作業で勝った」と表現した方がしっくりくるゲームでした。

佐々木朗希投手とオリックス打線の対戦は今回で早くも今年3度目。当然、相手は前回以上に対策を練ってきます。打者全員がバットを短く持って直球に狙いを定めてくる中、松川捕手は打者1巡目と2巡目で配球の入り方を大きく変えてきました。

まだ制球が定まっていなかった1巡目は9人すべての初球に直球を選択。直球待ちの相手に対して、あえて直球で打ち気を誘って球数を減らすことに成功しています。それが2巡目になると、今度は打者9人のうち7人の初球に変化球をチョイス。こうなると、打者はなかなか的を絞りづらくなるものです。

1球1球の反応を見ながら、変化球待ちの打者には直球を続ける。直球待ちであれば変化球で攻める。状況に応じた配球のイメージチェンジには、オリックス打線も戸惑ったのではないでしょうか。

一方で、佐々木朗希投手の修正力にも目を見張るモノがありました。浮いたフォークが目立ち、真っすぐもシュート回転気味。それでもリリースポイントや力の入れ具合を調整しながら状態を取り戻していく姿には、確かな成長を感じました。

あれだけ浮いていたフォークにしても、6回2死二、三塁で5番のバレラ選手を迎えた場面では、1ボール2ストライクから内角低めにショートバウンドさせて空振り三振。きっと勝負どころでギアチェンジしたのでしょう。

今年の佐々木朗希投手はメリハリが効いています。たとえば同じ158キロでも相手打者や状況によって、力の入れ具合を調整できる。去年までと比べて、投球のバリエーションが一気に増えた印象です。

本調子ではなくても悪いなりに試合を作って、長いイニングを投げられる。これは先発ローテを1年間守り抜く上で、絶対に欠かすことができない重要な要素の1つと言えます。

この日のテンポや呼吸を見ていても、松川捕手との信頼関係にもまったく不安はありません。誰の目にも「確実に計算できる投手」となった今季、どこまで勝ち星を積み重ねるのか、楽しみで仕方がありません。(日刊スポーツ評論家)


◆鳥谷氏と佐々木朗 20年からの2年間ロッテでチームメート。昨季は佐々木朗が食事やサプリメントについて鳥谷氏に質問を浴びせたこともあった。今年2月のキャンプ中には日刊スポーツ紙上で初対談。各方面で今季最多勝と予想する鳥谷氏がシーズン35勝の珍指令で笑わせると、佐々木朗は中6日フル稼働を目指すことを宣言。睡眠の質について話し込むなど、野球談議に花を咲かせた。

オリックス対ロッテ 6回裏オリックス2死二、三塁、バレラを三振に仕留めピンチを脱したロッテ先発の佐々木朗(左)は松川とグータッチを交わし声を上げる(撮影・垰建太)
オリックス対ロッテ 6回裏オリックス2死二、三塁、バレラを三振に仕留めピンチを脱したロッテ先発の佐々木朗(左)は松川とグータッチを交わし声を上げる(撮影・垰建太)