プロ初先発初勝利には届かなかった。巨人井上温大投手(21)が、4回1/3を8安打3失点(自責1)。最下位中日打線に捕まり、黒星を喫したが、日刊スポーツ評論家の西本聖氏は次回への手応えを感じ取った。
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プロ入り3年目を迎えた井上が、1軍初先発した。中継ぎでの登板を見ていて、先発で見てみたいと期待していただけに楽しみにしていた。結果は4回1/3で3失点だが、捕逸やエラーもあって自責点は1。もう1度、先発で見てみたいと思わせる内容だった。
真っすぐとスライダーは、1軍で勝負できる“球質”を持っている。立ち上がりこそ真っすぐが甘く入り3連打を浴びたが、どれもシングルヒット。右肩が開かず、それほどシュート回転しないため、長打にならなかった。
巨人の投手は、体が開いて投げるタイプが多い。しかし井上は、リリースの瞬間に右肩で壁を作って投げられる。甘い真っすぐを打たれたが、シュート回転して甘くなったのではなく、投げたコースそのものが甘くなっただけだった。
テイクバックがコンパクトで、腕が振り遅れにくい。打者からもボールが見えにくく、真っすぐでもスライダーでも空振りが取れていた。この手のタイプはブルペンから「甘くならないように」と強く意識して投げるだけでも、制球力は上がっていくと思う。
本来なら5回を投げ切らせてもらいたかったが、昨年に故障しているだけに92球での降板は仕方ないだろう。残り試合も減り、CSへの出場をかけた厳しい試合が続くが、上がり目の薄い新外国人投手を投げさせるぐらいなら、井上を先発させてほしい。
まだ気が早いが、来年に向けての課題を挙げておきたい。若い投手は球種を増やしたがる。井上の場合、真っすぐとスライダーのコンビネーションで攻めるタイプ。縦に落ちるフォークやスライダーと逆に落ちたり曲がったりするチェンジアップやシュート系の変化球の精度を上げたくなると思う。
しかし、今試合のピッチングを見ても、真っすぐとスライダーの制球力を磨くだけで十分。いろいろな変化球を投げようとすると、リリースポイントが乱れやすくなるし「曲げよう」や「落とそう」としすぎると、体の開きが早くなる。
球速を速くしたいと思いすぎて投げるのも、マイナス。必要以上に力んだり、体の開きも早くなる。まだ若く、走り込みやウエートトレーニングなどの練習をしっかりやれば、スピードは自然に上がっていくもの。
それよりも打者がスピード感を感じる開かないフォームで、制球力を磨くことの方が「勝てる投手」になるための近道だと思ってほしい。(日刊スポーツ評論家)




