どう表現していいのか、言葉が見つからない。こう言っただけで、誰のことを指しているのか分かるだろう。同点で迎えた7回、先頭打者の村上がエスコバーから勝ち越しソロ。この試合だけではなく、今3連戦での打撃内容は、映画や漫画の主人公のような現実離れした活躍だった。

ベンチの継投ミスを助ける1発だった。3点をリードした6回表の攻撃。先頭の投手・原に代打を出さずに打席に送った。今季は最多の球数は100球で、ここまで82球を投げていた。球数的にはまだ無理の利く範囲だが、調子そのものはボール球が先行する苦しい内容が続いていた。

この試合でDeNAに勝利すれば、優勝はほぼ確定するといっていい。中継ぎを積極的につぎ込める試合でもあった。

原は結局、6回裏に3連続四球を出して降板したが、どんなに引っ張っても牧に四球を出して無死一、二塁とした時点で降板させなければいけない。結果的にも3点を奪われて同点に追い付かれた。嫌なムードが漂っていた。

そんな劣勢を、村上がひと振りで振り払った。打った球も真ん中やや内角寄り低めの真っすぐ。それを右中間スタンドの中段まで運ぶのだから解説不要の1発だった。

ここまでくると「きれいごと」の真っ向勝負で抑えるのは無理だろう。「死球狙い」というと語弊があるが「よけないと当たってしまうよ」というぐらいの厳しい攻めは必要だろう。

昔は同じ打者に打たれると首脳陣や野手からも厳しく攻めるように指示された。具体的な目安でいうと、軸足を動かさないとよけられないようなコース。全盛期の落合など、こうした攻めは当たり前。練習や試合で敵チームと笑顔で話しただけでも怒られた時代だった。

ただ、現在のプロ野球界では、こうした乱暴な攻めはできなくなっている。自主トレは他球団の選手と行うのが普通になっているし「敵同士」という感覚より「同じプロ野球選手」という仲間意識の方が強いだろう。これがいいのか悪いのかは、賛否両論あるだろう。というより、乱暴な時代のやり方には否定的な意見の方が多いと思う。それでも、こうした攻めをしていれば、今3連戦はもっと接戦になって盛り上がっていたかもしれない。

負けている試合でも「おちゃらけたパフォーマンス」を容認しているチームも多く、私のような古い時代の人間にとって理解できない。仮に村上が粗っぽい時代でプレーしいたらどうなっていただろう。思わず、そんなことを考えてしまった。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの本塁打を放つ(撮影・丹羽敏通)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの本塁打を放つ(撮影・丹羽敏通)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間ソロ本塁打を放つ(撮影・鈴木正人)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間ソロ本塁打を放つ(撮影・鈴木正人)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上に勝ち越し本塁打を打たれたエスコバー(撮影・丹羽敏通)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上に勝ち越し本塁打を打たれたエスコバー(撮影・丹羽敏通)
7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの49号ソロ本塁打を放つ(撮影・丹羽敏通)
7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの49号ソロ本塁打を放つ(撮影・丹羽敏通)
7回表ヤクルト無死、村上は右中間ソロ本塁打を放ち手をたたく(撮影・鈴木正人)
7回表ヤクルト無死、村上は右中間ソロ本塁打を放ち手をたたく(撮影・鈴木正人)
DeNA対ヤクルト 9回表ヤクルト無死、村上は中前安打を放つ(撮影・鈴木正人)
DeNA対ヤクルト 9回表ヤクルト無死、村上は中前安打を放つ(撮影・鈴木正人)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの本塁打を放ってサンタナと喜び合う(撮影・丹羽敏通)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの本塁打を放ってサンタナと喜び合う(撮影・丹羽敏通)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの本塁打を放つ(撮影・丹羽敏通)
DeNA対ヤクルト 7回表ヤクルト無死、村上は右中間に勝ち越しの本塁打を放つ(撮影・丹羽敏通)