3位オリックスが執念の8投手継投で完封勝利を飾り、首位ソフトバンクに0ゲーム差とした。先発のドラフト1位椋木蓮投手(22)が右肘違和感で2回途中降板も、2番手の宇田川優希投手(23)が2回2/3を完全投球でプロ初勝利。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)は中嶋聡監督(53)の腹をくくった采配に注目した。【聞き手=佐井陽介】

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試合開始前からオリックス中嶋監督の「腹のくくり方」に驚かされました。前日7日に走塁ミスした福田選手の出場選手登録を抹消。まだ1軍で無安打の23歳渡部選手を1軍昇格させ、しかも「1番中堅」に抜てきしたのですから。

オリックスも含め、上位3チームが1ゲーム差以内にひしめく状況。残り16試合で2位西武との直接対決です。絶対に落としたくないゲーム。どうしても無難な選手起用になりがちな一戦でも、中嶋監督はブレませんね。実績にとらわれすぎず、状態がいい選手を使う。「腹のくくり方」は投手起用でも際立ちました。

先発の椋木投手が2回途中、右肘に違和感を訴えて降板。すると2番手には23歳宇田川投手を投入し、2回2/3を5奪三振の完全投球に導きました。宇田川投手は今売り出し中だそうですが、とはいえ今年7月下旬に育成選手から支配下登録されたばかり。そんな若手をこの重要な試合で初めてイニングまたぎさせるのだから、驚きました。

一方で、1点リードの5回はK-鈴木投手が2死から四球を出すと、まだ今季3試合目登板の吉田凌投手にスパッと交代。吉田凌投手が1人を抑えると、6回は小木田投手にあっさりスイッチ。序盤からの救援陣投入で1人でも多く投げさせたい展開でも、欲を出さずに投手をつぎ込む。経験値の低い投手でも、好調であれば2、3イニング目を任せる。信念に基づいた割り切りを感じました。

渡部選手はこの日、結局無安打に終わりました。ですが、この1番抜てきはまたチームに好影響をもたらすのではないでしょうか。持っている数字にかかわらず、調子が良ければ使ってもらえる。これだけシンプルな形があれば、1、2軍問わず選手のモチベーションは高くなるものです。

これで上位3チームのゲーム差は0になりました。8投手の継投を実らせたオリックス。激しい優勝争いの最中、重みのある1勝を手にしたように感じます。(日刊スポーツ評論家)

西武対オリックス 1回表オリックス1死二塁、中川圭の右飛で三塁進塁する渡部(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 1回表オリックス1死二塁、中川圭の右飛で三塁進塁する渡部(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 2回裏西武1死一塁の場面で登板した宇田川(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 2回裏西武1死一塁の場面で登板した宇田川(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 9回裏西武の攻撃を抑えた平野佳(右)は笑顔で伏見と握手(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 9回裏西武の攻撃を抑えた平野佳(右)は笑顔で伏見と握手(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 8回裏西武の攻撃を抑えたワゲスパック(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 8回裏西武の攻撃を抑えたワゲスパック(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 7回裏西武の攻撃で登板した阿部(撮影・浅見桂子)
西武対オリックス 7回裏西武の攻撃で登板した阿部(撮影・浅見桂子)