中日は球団記録を66年ぶりに更新するシーズン25度目の完封負けでV逸が決まった。勝てば3位阪神に2・5差まで詰め寄れたが、連勝も3で止まった。立浪和義監督(53)は「これだけ点が取れないのは我々の責任でもある」と自戒。それでも日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)は1点を追う5回の攻撃に着目し、「新しいプレッシャーのかけ方ができ始めている」と活路を見いだした。【聞き手=佐井陽介】

中日は敗れはしましたが、今までとは違ったプレッシャーのかけ方ができていますね。注目したシーンは1点を追う5回1死一、三塁、9番の勝野投手が打席に入った場面です。最終的に見逃し三振に倒れたのですが、その過程が非常に印象的でした。

打者は投手。阪神側のスクイズ警戒に驚きはありません。ただ、その警戒度がこれ以上ないほど高かったように感じます。初球から2球連続で変化球のボール球を要求。この際、一塁手の原口選手はベースを空けてまでチャージをかけています。1ボール1ストライクからの3球目は大きく外し、4球目もボール球のカーブを選択。最後は2球連続の見逃しストライクで三振に倒れましたが、投手の打者でもフルカウントまで重圧をかけ続けられたのには当然、伏線があります。

中日は特にシーズン終盤、スクイズを多用しています。9日の巨人戦では延長10回無死一、三塁で、3番阿部選手までスクイズを成功させています。通常、スクイズは「この打者の時は」「この走者の時は」と限定的に警戒されるものですが、今の中日は誰が打者、走者であろうとスクイズしてくる可能性がある。しかもセフティースクイズではなくスクイズがある。そういったプロ野球の世界でも珍しい、新しいプレッシャーのかけ方ができ始めているように感じます。

この日は1死一、三塁で一塁手の原口選手をチャージさせることで、一塁走者の土田選手が二盗に成功しています。結果的に打球を飛ばせませんでしたが、一、二塁間も広くしています。ブレないベンチワークを貫くことで、走者三塁の場面で得点する可能性を徐々に高めているのは間違いありません。若い選手を積極的に起用し、得点イメージを共有し始めている中日。最下位ではありますが、明るい材料も増えてきているのではないでしょうか。(日刊スポーツ評論家)