ただの1敗ではない。痛恨の1敗。今シーズン最大の懸案だった守護神・岩崎が大事なここにきて打ち込まれたショックは計り知れない。

梨田　恐らく矢野監督も、コーチも岩崎の不調を感じ取っていたはずだ。阪神は8回に1点ビハインドをひっくり返し、逆に2点をリードして岩崎をつぎ込んだ。だが、9回の先頭宮崎の反応からして、球にキレがないのは明らかだった。

その宮崎は中前打、代打大田に右前打といずれも真っすぐをはじき返された。9番関根のバスター気味の右飛で一、三塁とされ、1番桑原の詰まった右前適時打で1点。代打ソトは三振に斬ったが、3番佐野に投じたスライダーが一、二塁間を破られ追いつかれた。

梨田　私だったら同点に追いつかれて、4番の牧を迎えた場面で岩崎を代えていただろう。4－4になって負けなければいいという考えもできるし、ここで湯浅を突っ込んで流れを食い止めたいところだった。結果として牧を敬遠気味の四球で歩かせるならなおさらだ。何度もいうが阪神ベンチは岩崎が球威を欠いているのは察していたはずだ。牧の次は左の楠本だった。ここは想像だが、矢野監督がそれでも岩崎にこだわったのは、どこかで今シーズン限りで退任する自身を顧みたとき、一緒に戦ってきた岩崎への思い入れがよぎったのではないだろうか。

同点の9回2死満塁。5番楠本には初球のスライダーを右前に運ばれ、あっという間に勝ち越された。

梨田　監督として心を鬼にできなかったということだろうか。ここにきても勝てない青柳にも信頼を置けないし、岩崎の不調も誤算だった。大きなダメージになった1敗が尾を引かなければいいが…。【取材・構成＝寺尾博和編集委員】