143試合目で優勝の行方を分けたオリックスとソフトバンクの差は投打の軸の存在だろう。

オリックスには山本と吉田正が、ソフトバンクにも千賀と柳田と、絶対的な軸がいる。それぞれ故障やコロナなどで離脱する期間もあったが、年間を通してコンディション良く活躍したのは山本と吉田正だった。

この2人は試合の流れを1人で支配する力を持っている。開幕は出遅れたオリックスが巻き返せたのも、終盤にエースと4番が個の力で奪ったゲームが多かったから。比べると、ソフトバンクはそういう試合が少なかった。西武も圧倒的な山川がいるが、勝負の9月に不振に陥った。楽天も打点を稼ぐ島内は軸と言えるが、試合を支配する力で言えば吉田正には届かない。

軸がブレなければ、チームとして踏ん張ることができる。昨季の優勝に貢献した伸び盛りの宮城、宗、紅林ら、首脳陣は数字の上積みを期待するもの。連覇をかけた2年目は波に乗りきれない中、我慢強く起用して昨季と同程度の数字に引き上げたのも、軸がしっかりしているからだ。

中嶋監督のやりくりも光った。ワゲスパック、山崎颯と結果を出せなかった先発投手を途中から救援陣に配置した。本田、宇田川と才能あふれる剛速球投手もリリーフに据え、8回には阿部がハマり、守護神平野佳を含めたブルペンは層が厚かった。

昨季32本塁打の杉本は15本塁打にとどまった。タイプ的にも、開幕前から今年はどれくらい打つか見えない部分はあった。杉本が苦しんだ中で確実性のある打撃をする中川圭を起用。1発のある打線ではなくなったが、打線全体のつながりとしては杉本の不振を補完するピースとなった。

開幕前にオリックス優勝を予想したが、一方で連覇は簡単ではないと思っていた。成し遂げられたのは若月、伏見、頓宮と捕手3人制が機能しながらのバッテリー力もあるし、昨季の経験値も大きく、土壇場での逆転優勝に結び付いた。(日刊スポーツ評論家)

楽天対オリックス 2年連続のパ・リーグ優勝を決め喜びを爆発されるオリックスナイン。中央はペットボトルの水を勢いよく浴びせる山本(撮影・小沢裕)
楽天対オリックス 2年連続のパ・リーグ優勝を決め喜びを爆発されるオリックスナイン。中央はペットボトルの水を勢いよく浴びせる山本(撮影・小沢裕)
楽天対オリックス 4回表オリックス2死三塁、申告敬遠で出塁する吉田正(中央)(撮影・前田充)
楽天対オリックス 4回表オリックス2死三塁、申告敬遠で出塁する吉田正(中央)(撮影・前田充)
楽天対オリックス 6回表オリックス無死、右前打を放つ吉田正。投手宮森(撮影・前田充)
楽天対オリックス 6回表オリックス無死、右前打を放つ吉田正。投手宮森(撮影・前田充)