日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(39)が古巣阪神の完封リレーを見届け、坂本誠志郎捕手(29)の洞察力を絶賛した。坂本が先発マスクをかぶれば、これで今季6戦全勝で計2失点。虎の先輩はヤクルト村上から見逃し三振を奪ったシーンのリードに注目した。【聞き手=佐井陽介】

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坂本選手はこれで先発マスクをかぶった試合で6戦全勝ですか。今日のゲームでも先発大竹投手の多彩な変化球を見事に操り、相手打者が嫌なリードに徹していました。打者の狙いを感じ取る洞察力も際立っていた印象。中でも興味深かったリードが4点リードの6回無死一塁、石井投手とのコンビでヤクルト4番村上選手を見逃し三振に仕留めたシーンでした。

1ボール2ストライクから外角いっぱいの直球で三振。村上選手は全く反応できていませんでした。打者は通常、追い込まれたら直球と変化球を半々で待つイメージ。ただ、この場面で村上選手は変化球を狙っていたのではないでしょうか。そんな打者の読みを察知した上で裏をかいたのであれば、さすがとしか言いようがありません。

坂本選手は先発マスクをかぶった6試合で計2点しか取られていません。これは驚くべき数字です。打者を研究し尽くし、投手の特長を存分に引き出している証しでしょう。一方で、ゲームメークはもちろん投手との共同作業でもあります。坂本選手のリードの意図を把握し、しかも要求通りに制球できる投手がいるからこそ、この「6試合で計2失点」という驚異的な数字をたたき出せているわけです。12球団屈指と言える投手力が坂本選手の良さを際立たせていると表現してもいいのかもしれません。

打者では6番井上選手のポテンシャルの高さをあらためて感じました。1回2死満塁で初球をとらえて左前適時打。初見の投手、しかもWBC投手でもある高橋投手に対して初球からタイミングを合わせられるのはだてではありません。元々バットにボールを乗せるタイプで、自分の大阪桐蔭同級生でもある西武中村選手と似た部分も感じます。1本出れば、ホームランが止まらなくなるような期待感すらあります。(日刊スポーツ評論家)