DeNA対中日 2回表を無失点に抑えベンチへ引き揚げるDeNA東(撮影・横山健太)
DeNA対中日 2回表を無失点に抑えベンチへ引き揚げるDeNA東(撮影・横山健太)

DeNA東克樹投手は、右打者にも左打者にもしっかりインコースを突けていた。

甘く入ったのは石川昂に2ボールから本塁打を浴びたツーシームの1球だけ。とにかくコントロールが素晴らしかった。7回まで投げたことで、前日に延長12回まで戦った次の試合で、リリーフの起用も2人で済んだ。6回で降板すると一波乱ありがちだが、先発が7回を投げ切ったことは価値がある。暑さの中で、四球がなかったからこそ、球数も89球と少なくて済んだ。

今季の東は、とにかく四球が少ない(与四球率0・59は両リーグ1位)。この日も打者27人のうち20人で初球にストライクを取っていた。初球から厳しいコースを狙ってくる打者は、そうはいない。山本のリードもあるだろうが、いろいろな球種でうまく投手有利なカウントをつくっていた。逆に言うとカウントを悪くした石川昂だけは、2ボールとした前の打席からどこか投げにくそうだった。

東は入団当初からコントロールは悪くなかった。トミー・ジョン手術から3年目を迎え、肘への不安が消えて、従来の感覚が戻ってきたのだろう。今日のような投球を続けていけば、最多勝も十分狙える。

DeNA対中日 ピカチュウが見つめる中、ヒーローインタビューで声援に応えるDeNA東(中央)(撮影・横山健太)
DeNA対中日 ピカチュウが見つめる中、ヒーローインタビューで声援に応えるDeNA東(中央)(撮影・横山健太)

攻撃では6回の3点目が、点の取り方が最高だった。2-2の同点に追い付かれた直後、先頭の牧が二塁打で出塁した。どうしても1点がほしい場面。ここで、5番ソトが初球で二塁ゴロを打って走者を三塁に進めた。外角高めのスライダーだった。この進塁打があったからこそ、楠本の勝ち越し犠飛につながった。外国人だろうが4番打者だろうが、優勝するためには、こういう野球をしていかないといけない。もちろん楠本の仕事ぶりも見事だったが、間違いなくソトが勝利の立役者となった。しっかり評価したい。

先発投手がストライク先行の投球で7回を投げきり、つながりを重視した攻撃で勝ち越した。投打ともにこうした野球を続けていけば、98年以来25年ぶりの優勝は自然と近づいてくる。この1勝は内容が充実し、今後への指針となる白星となった。(日刊スポーツ評論家)